第5章 〖 繋いだ指先の行方 〗 人気投票2位記念 岩泉 一
及「もし、つーちゃんがひとりならさ?誰か迎えに来るまでオレ達と一緒に遊ばない?」
『いっしょにあそぶの?』
及「うん。ほら見て?ボールならここにあるし」
及川が自分ボールを目の前に出し、これで遊ぼうか?と更に言った。
『つーちゃんもいっしょにバレーすればいいの?おぅちゃんみたいに上手じゃないよ?』
及「オレもヘタクソだから、一緒にバレーやろうよ?そこの顔がコワーイお兄ちゃんも一緒でよければ、だけど」
コワーイ顔の、お兄ちゃん?
「おい、それは俺の事じゃないだろうな?」
ピクリと眉を寄せながら、及川を見る。
及「岩ちゃん以外に、誰がいるの?」
ケロリと言い放つ及川に軽くケリをいれ、俺はブランコから降りた小さい手を掴んだ。
「1人で待ちぼうけするより、俺達といた方が危なくないだろ。誘拐されたらどうすんだ・・・」
そう誘って、それから毎日のように俺達は公園で会う度に3人一緒にバレーボールを使って遊ぶ日々を送った。
遊び続けて少し暗くなる頃になると、おぅちゃんと呼ばれる人が走って来て、小さな手を引いて一緒に帰って行く。
時々、いつもより早く迎えに来た時は、そのおぅちゃんって人も混ざってバレーして遊んだり、俺と及川は駄菓子を貰ったりしてた。
なんかバレーボール上手いと思ってたら、部活ってやつでバレー部に入ってるって言ってた。
別に駄菓子が欲しいから一緒に遊んでたわけでもない。
俺には兄弟とかいねぇし、毎日顔を合わせる度に・・・妹とかいたら、こんな感じなんだろうかとか、俺に兄ちゃんがいたら・・・とか、そんな事も思うようになり、一緒に遊んでいるのが楽しいと思う日が増えた。
チビ子がおぅちゃんと呼ぶから、自然と俺達もおぅちゃんって呼ぶようになり、仲良く遊んだりした。
そういや、ごくたまにだけど・・・
おぅちゃんが、おぅちゃんじゃない時があったな。
話し方とか、あと制服もいつもと違う感じで。
俺にはよく分からねぇけど。
でも、そんな風に3人で待ち合わせては日が暮れるまで遊んでいた・・・ある日。
隣町で誘拐事件が起きたっていうニュースとかをテレビでやってて。
誘拐された子供は、まだ見つからないって大人達が話してた。
子供の俺らからしたら、隣町なんてスゲー遠い所の話で。
別に俺達は平気だとか、勝手に思ってたんだ。