第5章 〖 繋いだ指先の行方 〗 人気投票2位記念 岩泉 一
その兄ちゃんが手を繋ぎながら公園から出て行く・・・ような?
あの兄ちゃん、ここらで見た事ない制服着てるから、高校生なのか?
あれ?
でもたまに違う制服着てる時もあるような・・・
どういう事だ?
及「岩ちゃん?どしたの?」
「あ?いや、あそこにいる小さいヤツ・・・最近よく見かけるなって」
俺が言うと、及川もブランコを見て・・・ホントだ・・・と言った。
及「オレも気がついてたよ?いっつも1人でブランコ乗っててさ。友達いないのかな?」
そこじゃねぇだろ!と1発ゲンコツをくれてやり、また、ブランコを見た。
「なんか、あんな小さいのが1人でいるとか危ねぇよな」
及「岩ちゃん・・・いくらモテないからって、あんな小さい女の子に・・・痛ッ!」
アホなことを言う及川にもう1発ゲンコツをしてから俺はブランコまで近寄った。
「おい、お前!」
『・・・?!』
声をかけるとビクつかれ、ブランコの鎖を握る手に力が入ったのがわかった。
「お前、いつも1人でいるけど母ちゃんは?」
『つーちゃん、1人じゃないもん。ここで待ってたら、おぅちゃんが迎えにくるもん』
おぅちゃん?
・・・お兄ちゃん、の事か?
「お前いつも1人だろ。夕方まで1人だと危ないだろ」
『ひとりじゃないもん!もうすぐ、おぅちゃんくるもん!』
・・・話になんねぇ。
なかなか話が繋がらないイライラが溜まる頃、及川が俺の肩を叩いた。
及「岩ちゃん、そんな怖い顔して言ったらダメじゃん。女の子にはさ、もっと優しく声をかけなきゃ」
「・・・じゃあ及川、お前が話しろよ」
俺は自分以外に兄弟とかいねぇし、こういう時の小さい子の扱いはよく分かんねぇ。
なのに、毎日のように1人でいるコイツに・・・声をかけずにはいられなかった。
及「ねぇ、名前は何ていうの?」
「・・・おぅちゃんが、自分のなまえを言わない人につーちゃんのこと、教えちゃいけないって言ってた」
おいおい、アッサリ教えてんだろ。
及「そっか、つーちゃんっていうんだね?」
「なんでつーちゃんのこと知ってるの?!すごい・・・超能力者?」
及「どーかなぁ?お兄ちゃんは、カワイイ子の事なら何でも知ってるよ」
・・・俺はいま、及川の将来がチラッと見えた気がした。
そして何となく未来のライバルが・・・お前の気がするよ。