第5章 〖 繋いだ指先の行方 〗 人気投票2位記念 岩泉 一
『あの、ハジメ先輩?ホントに及川先輩に買いに行って貰って良かったんですか?本当なら、1番年下の私が行くべきなんじゃ?』
「いいんだよ。じゃなきゃ、お前とふたりになれねぇだろ」
『ふた、り・・・』
あからさまに嬉しそうな顔しやがって・・・
「行くぞ、及川が戻って来るまで・・・ちっとばかり散歩だ」
それ以上は何も言わず、黙って手を繋いで歩き出した。
噴水広場をブラついて、子供たちがキャッキャと走り回るのを2人で眺めていた。
『ハジメ先輩、あの子・・・1人でしょうか・・・』
紡に言われ、俺も同じ方を見る。
『さっきから気になって見てたんですけど、周りに大人はいないし・・・ずっと1人で遊んでるし・・・』
「声、かけてみるか?」
紡にそう言うと、女の子だから自分が先に声をかけてみると言って駆けて行った。
いくつか会話を交わした後、紡はニコニコしながら手招きをして俺を呼んだ。
『ハジメ先輩、この子やっぱり1人みたいです。お母さんが帰って来るのを待ってるって。それで、せめてお母さんが迎えに来るまで一緒に遊んでもいいですか?』
「あぁ、そうだな。1人にしてより、その方がいい・・・危ねぇからな」
そう言いながら鞄を置き、俺達は3人で砂場遊びを始めた。
遊び出してすぐに及川も戻り、紡が自分のアイスをちびっこに食べさせ、俺が紡と半分ずつ食べた。
『じゃ、お山つくる続きしよっか?』
ー うん! ー
「うっし!どんどん大きくしてトンネル掘ろうぜ!」
及「何だかんだ言って岩ちゃんが1番張り切ってる?」
そんな事を言う及川にケリを入れてから、俺は砂を掻き集める。
及「岩ちゃん、なんか前にもこんな事あったよね?覚えてる?あの小さな女の子のこと」
「・・・覚えてるよ」
紡に何となく似ている、記憶の片隅にいる小さな女の子を思い出しながら、俺は及川にそう返事をした。