第5章 〖 繋いだ指先の行方 〗 人気投票2位記念 岩泉 一
最近、紡を見てると時々思い出す事かある。
俺と及川が小学生の頃、よく遊んでた公園にいつも夕方まで1人でいた・・・小さい女の子。
だいたい決まった時間になると、にいちゃんだか誰だかが迎えに来て、手を繋いで一緒に帰って行ってたっけ。
雰囲気・・・似てるんだよなぁ。
あの時の小さい女の子と、紡。
ま、人違いだろ。
あの時の俺や及川との年の差を考えても、まだきっと小学生・・・くらいか?
やっぱ違ぇな。
『ハジメ先輩?今の聞いてました?』
小首を傾げて、まるで小動物のようにジッと見つめ上げてくる紡に、思わず照れる。
「わ、悪りぃ・・・考え事してた」
及「岩ちゃんは悪いヤツだねぇ~。可愛い女の子が一生懸命に話してるのに、考え事ですかぁ?」
「うっせーな!だいたい何でお前が毎回いるんだよ!」
及「えぇ~、イイじゃん別に。帰る方向も一緒なんだしさ?ね?紡ちゃん?」
『あ、はい。そうですね』
紡もそこ認めんなっつーの・・・
毎回、及川がいたら全然二人の時間なんかねぇだろが。
及「あ、紡ちゃん、アイス食べよっか?」
『アイスですか?う~ん・・・でも今日は部活帰りだからお財布持って来てないので・・・』
及「及川さんが買ってあげるから!オレがアイス食べたいし!ね?」
そっか、中学生は普段から財布持ち歩かねぇしな。
大会や遠征の時だって、必要金額以上は禁止されてたっけ。
『でも、この前もそう言ってご馳走になったから・・・』
「及川、俺ソーダ味。紡はいつものイチゴのでいいな?・・・じゃ、行って来い」
及「パシリかよっ!」
「いいから行って来い。お前のそのムダなキラキラ光線振りまきながら行って来い。あぁ、慌てなくていいぞ?俺と紡はそこの公園でのんびり待ってっから。念の為もう1度言う・・・ゆっくりでいいからな」
及「岩ちゃん、オレを追い払おうとしてない?」
「・・・早くいけ」
及「もぅ何さ!ゆっくり行けとか早く行けとか・・・あ・・・行ってくるから、ゲンコツしまって貰えるかな?」
鞄だけ置いてくから預かってね~と言い残し、及川が来た道を引き戻し紡の好きな銘柄があるスーパーに向かって行った。