第4章 僕らのお姫様 (桜太&慧太)
「でも、俺は今ちゃんと生きてる・・・」
慧「あ?」
「何でもない、ただの独り言だよ。さてと、アルバム片付けて紡の顔でも見に行こうかな?」
灰皿に水をかけ、ゆっくりしてていいよと慧太に言ってから歩き出す。
慧「生きててくれなきゃ、困るだろ・・・オレが紡を独り占めしていいのかよ?」
その言葉に、足を止め振り返った。
「聞こえてたんじゃないか」
慧「さぁてね?オレもただのひとり言だ・・・」
「ホント・・・いい性格してるよ、慧太は」
言いながら、わざと肩を竦めて見せて背中を向けてリビングへ続く扉を開けた。
慧「頼りにしてんぜ、長男?」
追い越しながら、慧太が俺の肩を叩いて行く。
「はいはい、次男も頑張れよ?」
背中を向けたまま、慧太が片手をヒラヒラさせる。
全く・・・俺の弟妹達は。
そんな事を思いながら、テーブルのアルバムに視線を落とす。
・・・この写真って?
そこには、さっき見ていた夢のままの俺達3人が一緒に眠っている姿があった。
父さん達、いつの間に撮ってたんだろう。
こんな写真があるの、気が付かなかったよ。
サイドボードから新しい写真立てを出して、そこに写真を入れた。
「慧太、ちょっとこれ見て?」
キッチンで鼻歌を歌いながらイチゴを洗う慧太に声をかけながら、写真立てを持って行く。
慧「なんだぁ?こんな写真、父さん達いつ撮ったんだ?」
「それは知らないけど。でも、俺がさっき見てた夢と同じなんだよ、紡が最初の1歩を踏み出す練習してて。ねぇ慧太、覚えてる?紡にパパやママよりも先に、俺達の事を呼ばせようって2人で考えてた時の事」
慧「・・・あぁ!あの時か?!交代で紡と遊びながら宿題やった時な!へぇ~・・・あの時のオレ達、こんな風に寝ちまってたんだなぁ・・・」
懐かしむ目で、慧太が写真の中の紡を撫でた。
慧「この頃も今も紡が小さいのは変わらねぇな」
「そうだね・・・でも、紡は紡だよ?俺達が何年も待ち焦がれてた、サンタクロースからのプレゼント」
写真立てをどこに置こうか考えながら、慧太にそう言った。
慧「お前まさかとは思うが・・・その歳で、まだサンタクロースを信じてるのか?」