第4章 僕らのお姫様 (桜太&慧太)
その女子なら、よーく知ってる。
僕と慧太をしょっちゅう間違えるくせに、この前、僕のことが好きって書いてある手紙を渡された。
でも、慧太には言えない。
だって慧太は、その子の事が好きだから。
直接聞いたわけじゃないけど、慧太を見てれば僕にだって分かる。
それに、小学生なのに付き合ってほしいって意味が分からない。
僕だっていつかは・・・中学生とか高校生になったら彼女?とか欲しいと思うかも知れないけど。
別に今は紡がいるからそんなの欲しいとは思わない。
慧「そいつの弟がさ、最近パパとかママとか言い始めたんだって自慢気に言って来てさ。それで、紡はいつくらいにそういうの言うのかなって・・・思ったり?」
「慧太はせっかちだなぁ。そんなの、うちの紡と他の家の弟と比べても意味ないじゃん」
慧「けどさぁ、あんな風に自慢されたらムカつくし・・・とか」
「まぁ、でも?僕にはいい考えがあるよ?」
慧「いい考え?」
うんって頷きながら、やり終えたばかりの宿題をしまう。
「紡にさ、パパとかママとかより先に僕達の事を呼ばせたいんだ」
僕がそう言うと、慧太はスゲェ!それスゲェな桜太!なんて大声を出したから紡がびっくりして泣き出した。
「慧太、泣かすなって言ったのに・・・おいで紡」
紡に手を伸ばすと、慧太の所から僕の所に紡が移ってきた。
「よしよし、慧太がびっくりさせてごめんな?お兄ちゃんが慧太にメッ!ってしたから、もう大丈夫だからね」
小さく言いながら紡の頭や背中を撫でてあげると、紡は小さな小さな手で僕のシャツをキュッと掴んだ。
・・・かわいいなぁ。
そっと紡に顔を擦り寄せてみる。
うん、優しい気持ちになれる・・・いい匂いがする。
慧「それでさ、どうやって紡にお兄ちゃんって呼ばせんの?」
「そこを今から僕たちで考えるんだよ。どう考えてもパパやママより、お兄ちゃんの方が呼び方が長いだろ?」
慧「だ~よなぁ~・・・」
「だからさ、お兄ちゃんに変わる僕たちの呼び名を考えてみよ?」
それから僕たちは、2人でいろんな呼び方を考えたけど・・・
これと言って紡がすぐに呼べそうなのは浮かばなくて。