第4章 僕らのお姫様 (桜太&慧太)
「ほぅら、紡?おいでおいで・・・」
つかまり立ちから手を離し、ユラユラと揺れる紡の体から手を浮かせてみる。
驚かないように、静かに、そっと距離をあける。
「おいで紡・・・パンダさんだよ~」
紡のお気に入りのヌイグルミをワチャワチャと動かすと、ニコ~っとして初めての1歩を踏み出そうとする。
頑張れ・・・もうちょい・・・
小さな小さな両手をパタパタさせながらバランスを取り、片方の足を動かした。
『っ・・・だぁ~』
「やった!紡、上手に出来たねぇ~!!」
嬉しさのあまり、僕は紡を抱きしめる。
慧「アホか桜太。たかだか1歩じゃん」
側で宿題をやっていた慧太が、僕にそんな事を言った。
「いいんだよ!今の1歩は紡の大きな進歩なんだから。父さんや母さんに教えたら、きっと喜ぶよ?」
慧「そうか?っと、宿題終わったぁ!よーし紡、今度は僕が遊んであげるぞー?」
慧太の呼びかけにキャッキャと声をあげて喜ぶ紡が、かわいくて仕方ない。
「じゃあ今度は僕が宿題やるから慧太が紡と遊んでてね?泣かせるなよ?」
慧太がボールを転がせばハイハイで追いかけ、ヌイグルミ遊びをすれば、お気に入りパンダさんをギューッと抱きしめて座る。
宿題をやりながらも紡の事が気になって、慧太と遊ぶ紡をチラチラと見てしまう。
・・・だって、ずっと欲しくて待ちに待ってた妹なんだもん。
サンタさん、ありがとう!
僕達にこんなかわいい妹をプレゼントしてくれて!
・・・本当はちゃんと知ってる。
サンタクロースが実在しない事は。
だけど、神様からの贈り物なんて呼ぶより、サンタクロースからのプレゼントって思う方が僕達にはピッタリなんだ。
神様は願えばいつでもそばにいる。
でも、サンタクロースって1年の決まった日にしか・・・お家に来ないでしょ?
だから紡は、サンタクロースからのプレゼント。
慧「なぁ桜太?」
「ん~?」
紡を抱き抱えて、慧太が僕の横に来る。
慧「うちのクラスの女子にさ、紡とそんな変わんない位の弟がいるヤツいるじゃん?」
「あ~、そう言えばいたね。その子がどうかしたの?」