第3章 小さな手のひらに大きな愛を (西谷 夕 ・特別番外編)
そんな姿のままで体育館の扉を開けると、みんなはちょうど休憩中だった事もあり、ずぶ濡れのオレ達を見て慌てだす。
みんな換えのタオルを出しては紡をわしゃわしゃと拭いていた。
オレはよ!と言いたい所だが・・・そんな事を言ってる場合じゃねぇ。
「コラァ!力も龍も!それから1年も!みんなベタベタ触るなぁ!!」
紡を引き寄せ背中に隠す。
清「西谷、邪魔。どいて」
潔子さん・・・雨の日でもなんてお美し・・・じゃなくて!!
邪魔って・・・
いま、邪魔って・・・
清「城戸さん、風邪ひいちゃうからこれ使って?みんなの気持ちだから」
『はい・・・』
澤「清水、俺も予備持ってるから使って?はい、これ」
大地さんとスガさんまで、タオルを持って歩いてくる。
・・・敵が多すぎる。
『あの、澤村先輩・・・それから、皆さんも・・・』
澤「これ、返しておくよ。今日、俺は何も受け取らなかったし、何も聞いてもないし、見てもいない。そういう事にするから、ね?」
『はい・・・すみませんでした・・・』
大地さんの言葉で、紡が声を詰まらせた。
「紡、よかったな」
『はい・・・』
澤「あ~、でも?何もなかったけど・・・無断遅刻は無断遅刻だな?」
菅「だね?」
澤「罰として・・・城戸さんはこれからも、しっかりと働く事。それが今日の無断遅刻の罰だな」
菅「改めて宜しくね、紡ちゃん?」
涙を浮かべ、紡は大きく返事を返す。
「・・・って!スガさん!!やたらに紡に抱き着くのやめて下さい!」
菅「いいじゃん、減るもんじゃないし」
「減りますよ!何かいろいろと!」
菅「あ、そうだ!西谷、お前には大地からスペシャルなプレゼントがあるんだった。な、大地?」
・・・あ、何かヤバイ空気。
大地さんから早くも黒いオーラが・・・
澤「西谷、お前も無断遅刻・・・だな?」
「え?いや、オレは紡と仲直りして連れて帰るって言う正当な理由、が・・・はい・・・遅刻でいいです」
そもそもこうなったのは、オレの責任だからな。
ここは潔く、しておこう。
澤「よし。じゃあ西谷は今からレシーブ300!他のみんなは順番にサーブでもスパイクでも打つ!・・・それでいいか?」