第3章 小さな手のひらに大きな愛を (西谷 夕 ・特別番外編)
『及川先輩も、岩泉先輩も・・・いろいろごめんなさい・・・私、凄い酷いことをたくさん・・・』
及「そんな事は気にしないって。どうしてもって言うなら、及川さんのほっぺにチュ~ってしてもいいよ?」
「させません!!」
岩「お前もいい加減にしろ!」
オレと同時に、紡の元カレが叫んだ。
岩「ったく、悪いな。えっと・・・」
「烏野バレー部の、西谷です」
岩「じゃ、西谷。コッチの事は気にすんな。その代わり・・・」
言いながら紡をチラリと見る。
岩「・・・大事に、しろよ?」
「もちろんです!死ぬほど好きですから!」
『ちょっ、西谷先輩?!』
正々堂々と叫ぶオレと、急に恥ずかしがる紡を見比べて、岩泉というヤツが笑う。
岩「紡、これから何度もケンカするかも知れねぇが・・・ちゃんと向き合えば分かり合えるから。お互いが大事なら大事な程、ちゃんと向き合え。俺達は、いや、俺はそれが出来なかったから、今に・・・至るんだ」
『・・・はい』
この2人に、どんな過去があったのかはオレには分からねぇし、今が大切だとは思う。
だけど・・・それでも。
過去の紡の幸せな時間に、妬けてくるのは、確かで。
でも、この2人の・・・別れがあったからこそ、オレは紡と出会えたのも事実だ。
岩「死ぬほど、好きなんだろ?」
『岩泉先輩!!』
過去は過去。
オレは・・・心のデカイ男になりたいからな。
「この借りは・・・必ず返します!試合で!」
及「試合?烏野が・・・ウチと?痛たたたっ!岩ちゃん?!」
「必ず勝ちに行きます。オレには・・・コイツがついてるから」
岩「必ず、俺達のいる所まで上がって来いよ」
差し出された手を、オレは握り返した。
「負けません」
握り交わした手を解き、今度は紡と繋ぐ。
「帰るぞ。みんなもお前を待ってる」
『あ・・・でも私・・・』
「大地さんから、ちょっと説教食らうだろうが、大丈夫だ。オレが絶対、守ってやる」
キュッと手を握り、2人にはもう1度礼を言ってから公園を出た。
強まる雨足の中を、今度は紡と走った。
傘もなく走り、体育館に着いた時には2人ともずぶ濡れで・・・
何となくお互いに顔を見合わせて、笑った。