第3章 小さな手のひらに大きな愛を (西谷 夕 ・特別番外編)
『私も。私も西谷先輩が大好きです!死ぬほど好きです!だから・・・いつも、一緒にいたい・・・』
紡の言葉に、全身の熱が一気に上がる。
オレが1番、欲しかった言葉に・・・視界が滲む。
「紡・・・」
もう1度名前を呼んで、今度は両手を伸ばした。
1歩、また1歩と、躊躇いながらも紡が前に進み出す。
そして、ゆっくりとオレの手に触れた。
触れたいと思っても、近くて遠かった紡の手を引き寄せ、そのまま強く抱き締めた。
小さな温もりを感じて、オレはこの温もりをどれだけ待ち焦がれていたのかを再認識する。
「不安にさせて、ゴメン・・・傷付けて、ゴメン・・・何度でも謝るから、だから、ゼロに戻るとか・・・言うなよ・・・」
『私も、1人でモヤモヤして八つ当たりして・・・ごめんなさい・・・』
オレは、返事の代わりにもう1度強く抱き締めた。
及「あ~、コホン。盛り上がっちゃってるトコ悪いんだけど・・・オレ達、目のやり場に困ってるんだよねぇ?」
遠慮なしに声をかけられ、自分達がどんな状況を晒しているのかを今更ながらに気付く。
『は、恥ずかしい・・・』
顔を真っ赤にして、紡がオレの胸に顔をすり寄せる。
なんだ、この・・・いつもより100万倍もの可愛さは!!
及「お~い?聞こえてるかな?」
岩「うっせーなクソ川!テメェはちっと黙ってろ!」
及「痛ッ!岩ちゃんゲンコツやめてよ!」
岩「黙れって言ってんのが聞こねぇのか?」
及「・・・聞こえてます」
2人のやり取りに、小さく紡が笑い出した。
そんな紡の頭に、ポンッと手を置く。
「あの!」
紡を腕に閉じ込めたまま、オレは2人に声をかけた。
「紡をここで引き留めてくれて、ありがとうございました!・・・もしここで会えなかったら・・・オレはすれ違ったまま、後悔する日々を送ったと思います」
岩「いや、俺達は感謝されるような事は何もしちゃいねぇよ」
及「そうそう。たまたま可愛い紡ちゃんが、泣いてるのを見つけただけ・・・あ、岩ちゃん、睨むのやめて・・・」
話し声を聞いただけで、紡がまた笑い出した。
・・・それだけ、この人達と付き合いが長いって事なんだな。