第3章 小さな手のひらに大きな愛を (西谷 夕 ・特別番外編)
強くなる雨の中、オレは地図を見ながら必死に走った。
こんな雨の中、どこにいるんだよ、紡!
せめて、まだ家に着いてないなら。
少しでも濡れずに済む所にいてくれ!
バシャバシャと音を立てながら、走り続けた。
信号待ちの間、スーパーの屋根の下に入り地図を確認する。
この先の公園を過ぎたら、2つ目の角を右か。
信号が代わり、オレは雨の中に飛び出して行く。
あった・・・
公園ってのは、あれだな?
念の為に大地さんが書いてくれた公園の名前を確認しようと、入口で足を止めた。
柱に書いてある名前と、地図の名前を見比べて、間違っていない事を確認する。
視界の端に人影が移り、この雨の中で何やってんだと顔を向けた。
・・・いた。
オレが今、1番会いたいヤツが・・・
「紡!!・・・やっと、やっと見つけた・・・」
名前を呼ぶと、オレを振り返った紡は驚いた顔をしていた。
誰と、一緒なんだ?
1歩ずつ進みながら、紡の側にいる人に目を向ける。
青葉城西の、制服だ。
僅かな記憶を辿り顔を見れば、青城のセッターと、エーススパイカー・・・
どうして、紡と一緒にいる?
それに、なぜ紡の手を?
お互いの顔がよく見える距離まで歩み寄り、オレは紡の正面に立つ。
『西谷先輩・・・どうして・・・』
「紡を、迎えに来た」
オレの、自分の意思で。
『だってもう、』
「違う!・・・オレは終わったなんて思ってない!」
そうだ、終わりになんかしたくない。
こんな終わり方なんて、したくない。
『バレーの、邪魔になるから・・・私は・・・西谷先輩の、1番じゃないって・・・』
・・・やっぱり、あの時の話を聞かれていたのか。
「それは、その・・・売り言葉に買い言葉でっていうか・・・紡を傷付けた事は謝る・・・本当にゴメン・・・」
時間が止まったように、沈黙が・・・長い・・・
「紡、お前が1番じゃないって言ったのは、」
『もう・・・いいです・・・私はどんなに誰かを好きになっても、その人の1番には・・・なれないってわかったから』
「話を聞けよ!あ、いや・・・聞いてくれよ・・・」
『聞きたくない!』
「紡!」