第3章 小さな手のひらに大きな愛を (西谷 夕 ・特別番外編)
グジャグシャになった髪を指先で梳かしながら、及川先輩が岩ちゃんは乱暴者だよね~なんて笑う。
岩「紡、さっき言ってた西谷?ってのは、その、あれだ・・・新しい、彼氏・・・とか?」
西谷先輩の名前を出され、ピクリと体が反応してしまう。
岩「・・・ケンカでもしたのか?」
『・・・います。違います、もう・・・そんなんじゃないんです』
及「別れた?とか?」
及川先輩の言葉に、また涙か溢れてくる。
『私が、いけないんです。岩泉先輩の時も、西谷先輩の時も・・・私が、バレーの邪魔ばっかりしてるから・・・』
岩「邪魔?って」
及「岩ちゃん!」
『だから、サヨナラ・・・して来ました』
それだけ話して、止まらない涙を両手で押さえた。
『同じ理由で、2回も同じ・・・サヨナラとか・・・だったら、もう、ずっと1人でいい・・・』
及「紡ちゃん・・・」
その別れの本人を目の前にして、その場にいるのが辛くて・・・
私はまた走り出そうと屋根から出た。
岩「待てって言ってんだろ!アホかお前!こんな雨の中どうやって帰るんだよ!」
『もう、どうだっていいんです・・・サヨナラ先輩・・・』
掴まれた手を振り解こうとした、その時・・・
ー 紡!!・・・やっと、やっと見つけた・・・ ー
聞きなれた声が・・・雨の音に混ざって・・・私の耳に届いた。
なんで?
どうしてここにいるの?
西谷先輩・・・