第3章 小さな手のひらに大きな愛を (西谷 夕 ・特別番外編)
~ 紡 side~
学校を飛び出して、校舎が見えなくなるまで走った。
でも、こんな早い時間に家には帰れず・・・
少しの間、時間を潰そうと帰り道の公園に寄った。
でもここは・・・あの人との最後の場所で。
西谷先輩やバレー部と最後になった日に、ここにしかいられない私は、そういう運命なのかも知れないとも思えた。
ポツンとブランコに腰掛け、何もすることもなく空を見てはため息ばかり吐いて。
ふと気がつけば、降り出した雨のせいで遊んでいたはずの子供たちさえいなくなっていた。
雨・・・か。
傘もなく、濡れる事も躊躇わずに・・・ひとり佇み続けた。
このまま雨が、全部流してくれたらいいのに。
今までの事も、さっきの事も、全部嘘だよって言ってくれたらいいのに。
だって本当は、西谷先輩と一緒に居たかったから。
次第に強くなる雨に混ざって、涙が遠慮なしに落ちていく。
いつの間に、こんなに大好きになってたんだろう・・・
ずっと見ていた小さな背中が、私の中で大きな存在へとなっていたのに。
私、ただのバカじゃん・・・
自分で出した結論なのに、好きだという気持ちが・・・どんどん大きくなっている。
ここにいると、ダメかも知れないと、そう思って立ち上がった。
帰ろう。
勝手な事をしたのも、桜太にぃ達に怒られても仕方ない。
ー 紡ちゃん?! ー
ー 紡?・・・お前こんな所で何してんだ! ー
聞き覚えのある声に振り返ると、そこにはよく知ってる2つの人影があった。
『及川、先輩・・・と・・・それに・・・』
どうしてこんな時に、しかもこの場所で会っちゃうんだろう・・・
お互いが姿を確認すると、2人が公園に入ってくるのがわかった。
嫌だ・・・いまこのタイミングで、顔を合わせたくないよ・・・
数歩後ずさり、それでも近付いてくる2つの影を振り切ろうと私は走り出した。
岩「おいっ!」
及「紡ちゃん、待って!」
呼び止められるのも聞かず、ただ突っ走った。
この先は、あの小高い丘だと・・・そう思ったら足が重くなり、前に進めなくなってしまった。
なんで・・・どうしてこうなっちゃうの?
立ち止まったまま、大粒の涙が流れていく。
岩「っと、捕まえた!」
及「あー!岩ちゃんに先越された!!」