第3章 小さな手のひらに大きな愛を (西谷 夕 ・特別番外編)
パンッと乾いた音と一緒に、頬に痛みが走る。
菅「清水?!」
オレはいま・・・潔子さんに?!
なんでだ?!
茫然と立ち尽くしながら、オレは潔子さんを見た。
清「目、覚めたかしら?西谷・・・いい加減、拗ねるのやめなさい」
「別に、拗ねてなんか・・・」
清「城戸さん、西谷と付き合い出した頃言ってた。まだまだ知らない事が多いけど、それを少しずつ知る度に嬉しくなるって。それから、自分達は家が反対方向だから一緒に居たくても無理なんだとも。早く帰って体を休めて欲しいからワガママなんて言えないって」
「でも行き帰りはいつも影山が」
影山がいるから・・・大丈夫だって言ったのは紡じゃないか。
清「どこかに出掛けたりしなくてもいい、一緒にいるだけでいい。西谷のプレーを見てるだけで、自分が出来ないことを重ねられて嬉しいんだ、って」
澤「あぁ、確かに言ってたな。自分は女だからコートで一緒にプレーする事は出来ないけど、西谷を見てるだけで自分もコートにいるみたいだってな」
腕を組んだ大地さんが、潔子さんに頷きながら言った。
菅「こんな時に言うのも、なんだけどさ。昨日、泣きながら紡ちゃんがオレに言ったんだよ
。なんで大地からの誘いを受けたんだろう、何が何でも断ってればお前とも会わなかったのにって」
そんな・・・
菅「もしかしたら、さ?紡ちゃんはその時から・・・こうすることを考え始めていたのかも知れない。ゴメン西谷、オレがもっとちゃんと引き留めていたら・・・」
「いえ・・・スガさんは謝らないで下さい」
オレは・・・紡がいなきゃ頑張れねぇよ。
紡が隣で笑っていてくれないと、困るんだよ!
だってお前は・・・オレの・・・
スガさんの言葉を聞きながら握った拳に力が入る。
旭「・・・西谷、こっから先はお前次第なんじゃないのか?」
「旭さん・・・」
まっすぐにオレを見据える旭さんの目は、旭さんがバレー部に戻って来た時の目と・・・同じだった・・・
オレ・・・次第・・・
「大地さん!!オレ!!」
澤「清水。ペンと紙くれ」
潔子さんから渡されたノートの切れ端に、大地さんがスラスラと何かを書いてオレに渡した。
澤「学校から城戸さんの家までの簡単な地図だ」