第3章 小さな手のひらに大きな愛を (西谷 夕 ・特別番外編)
「紡、オレお前に話が、」
『・・・あんまり遅くなると、澤村先輩達に叱られますよ?大会まではたくさん練習しなきゃだし、それにもうすぐ合宿だってありますし。だから・・・今日はこれで・・・』
なんか・・・様子が変だ。
よく分かんねぇけど、このまま帰したらダメだと・・・心が騒ぐ。
「紡、お前・・・なんか変だ」
立ち去ろうとする紡の腕を掴み、引き寄せようとした。
けど・・・
その腕もスルリと引き抜かれ、1歩後ろに下がられてしまう。
『先輩方が、待ってますよ?西谷先輩も、練習頑張って下さい・・・』
なんだこの違和感・・・
それに何でこんなにも、オレは不安を感じる?
『じゃ、西谷先輩・・・さよなら・・・』
縁「あ、ちょっと城戸さん?!」
軽く頭を下げ、力が呼び止めるも振り向かず・・・紡は走って行った。
最後のはなんだ?
さよなら?
また明日、じゃないのか?
さよなら・・・?
頭の中で紡が言った言葉を繰り返す度に、息が止まりそうになる。
体育館で、何かあったのか?
一抹の不安を抱えながら、オレは体育館へと走った。
「大地さん!!・・・いま、ここに紡が来てましたか?!」
軽く乱れる呼吸を整える間もなく、その場にいた大地さんに叫ぶ。
澤「西谷?あぁ、来てたよ。でも、これを置いて・・・帰った」
大地さんから差し出され、オレはそれを見て・・・驚愕した。
退部届・・・
・・・なんでだよ!
なんで何も言わずにこんなもの!!
「紡は・・・なんでこれを!」
菅「それは、お前が・・・西谷が1番よく分かってんじゃないのか?」
4人の、視線が痛い。
ケド、紡がここまで覚悟を決めたなら。
オレに出来ることなんて、あるワケない・・・
「・・・着替えて来ます」
旭「西谷、追いかけなくていいのか?お前はそれでいいのか?」
旭さんがオレにかけた言葉に足が止まる。
「オレにはもう、どうする事も・・・出来ねぇッス。それに、紡がそこまで決めたなら・・・」
キュッ・・・とシューズの音がして、誰かが近付いてくる。
清「西谷」
潔子さんの声に体が反応して、パッと振り返った。
と、同時に。