第3章 小さな手のひらに大きな愛を (西谷 夕 ・特別番外編)
ホームルームが終わり、日直の声も待ちきれず教室を出た。
急げば体育館に行く前に紡と話が出来るかも知れない。
階段を駆け上がり紡の教室を覗くと、既にそこには紡と影山の姿はなかった。
ふたり一緒にいないなら、体育館だ!
すぐに登ったばかりの階段を駆け下り、昇降口へ続く角を曲がると体が弾かれた。
「悪い!急いでて・・・あ・・・」
教頭「また君かね!!」
なんでこんな時に!
「スミマセン!オレちょっと急いでて・・・」
教頭「いくら急いでいるからと言っても、廊下を走っていい事にはならないだろう」
おもむろに腕を組み、教頭は俺を見下ろした。
教頭「せっかく部活に復帰させた思ったら、またこんな風に風紀を乱すとは・・・澤村君と今1度よく話をして置く必要があるな」
「ホントにスミマセンでした。今後は気をつけますから」
オレには急ぎの用事があるんだ。
教頭「いいかね、そもそも君は・・・」
クソッ!
教頭の説教が始まると長いんだよ!
それから何度も、分かりました、スミマセンでしたを繰り返し、通りがかった力達もなぜか一緒に謝ると、ようやくオレは教頭の説教から解放された。
縁「西谷、ホント教頭には気をつけろよ?」
「悪い、助かった・・・」
縁「ま、教頭の気も済んだし、また捕まる前に体育館へ急ごう。あまり遅れると、大地さんに・・・」
「あぁ、そうだな・・・行こうか」
話半分で聞きながら、オレは歩き出した。
こんなに時間が経ってれば、体育館へ直接行ったほうが早そうだ。
歩き出してすぐに龍とも合流し、揃って体育館へと足を運んでいた。
田「ん?・・・お嬢がコッチに歩いて来る」
紡が?!
縁「ホントだ・・・こっちに来るって事は、放課後の練習も休むのかな?」
オレ達が足を止めた事で、紡もオレ達がいる事に気が付いた。
『あ・・・っと、これから体育館に行くんですね・・・澤村先輩達は、もう着替えも終わったましたよ?』
やっぱり・・・目も合わせない、か。
縁「城戸さんは、どうしてこっちに歩いてたの?忘れ物でもした?」
『私は・・・放課後の練習、出ないので・・・』
縁「放課後も出ないって・・・朝練も来なかったし、もしかして具合でも悪い?」
『そういう訳じゃ・・・』