第3章 小さな手のひらに大きな愛を (西谷 夕 ・特別番外編)
『急に休んだりして、すみませんでした。あの、皆さんに聞いて頂きたいお話があります・・・時間、貰えますか?』
私がそう言うと、まだみんな来てないし大丈夫だと澤村先輩に言われ、小さく深呼吸をした。
『澤村先輩達に、何の相談もなくこういう話をするのは心苦しいんですけど・・・これを、受け取って下さい』
私は鞄から1通の封書を取り出し、躊躇うことなく澤村先輩の前に差し出した。
澤「これは・・・どういう事、なのかな?」
菅「退部届け?って、紡ちゃん嘘だろ?!」
菅原先輩の言葉に、私は黙って首を横に振った。
『1晩中、考えて出した結論です。澤村先輩や菅原先輩には、熱心にマネージャー補佐の時から誘って頂いたのに、私の弱さでこんな風にしか結論を出せない事、許して下さい』
菅「でも、辞めなくたって!」
『これで、いいんです。私がいたら、きっとまた西谷先輩はモヤモヤしたり、イライラしたり、それに・・・そういう事に私が邪魔になって勝てる試合も勝てないってなるのが、私は嫌です。澤村先輩、みんなでカラーコート目指すんでしょ?だから、』
澤「その、みんなの中に城戸さんも入ってるって言っても?」
『私は・・・みんなの活躍を、違う場所からちゃんと見守ることにします』
本当は、最後の勇姿まで・・・近くで見たかった。
だけど、ゼロに戻る事を決めたのは他の誰でもない・・・私自身。
『清水先輩も、今までいろんな仕事を教えてくれてありがとうございました。東峰先輩も短い間でしたけど、お会いできて良かったです』
旭「城戸さん・・・西谷の事なら・・・」
『菅原先輩、今なら思う存分・・・セクハラしてもいいですよ?』
軽く両手を広げて笑って見せる。
菅「そう改まって言われると、セクハラなんか・・・いや!違うからね!セクハラじゃないからね!!」
必死に弁明する菅原先輩を見て、みんなで笑う。
『澤村先輩・・・1度挫けて、不貞腐れていた私に、楽しい時間を・・・ありがとうございました』
澤「もし・・・もし俺が城戸さんの手を掴んで止めても、気持ちは・・・変わらない?」
『・・・はい。私がドキドキするのは、西谷先輩だけですから。その気持ちを忘れたくないんです』
澤「そっか・・・」
澤村先輩の言葉を最後に、みんなが口を閉ざした。