第3章 小さな手のひらに大きな愛を (西谷 夕 ・特別番外編)
~ 紡 side~
今朝は朝練が終わってしまうより早く、教室に入った。
今日は1日、休み時間になる度に何となく西谷先輩が訪ねてきそうで、その度に何か用事を見つけて教室から出ていた。
戻る度に、クラスメイトや影山から西谷先輩が探してたって聞いたけど・・・それでも、会いに行く事はしなかった。
もし、会ってしまったら。
顔を合わせてしまったら。
どんな顔をしたらいいのか、分からなかったから・・・
何とか1日をやり過ごし、放課後になった。
影「おい、放課後は部活行くんだろ?」
荷物をまとめている私の所へ、影山が近づいてきた。
『行くよ。もちろん影山も行くんだよね?・・・一緒に体育館行こう』
影「あぁ、じゃあ早くしろ。日向に先越されたら腹立つから」
『何それ~』
普段と変わらない話をしながら、影山と体育館までの道を歩く。
『影山、なんか色々とありがとうね。いつも私が困ってる時は、庇ってくれたり、助けてくれたり・・・側に、いてくれたり。本当、感謝してる』
影「は?いきなり何だよ」
『いいから聞いてよ?私のささやかな感謝の気持ちなんだから。いつも面倒なヤツでゴメンね?でも・・・それも、もう面倒な事かけたりしないから、安心して全力で部活に励み給え』
影「オレはいつでも全力だろうが!何だよ急に変なこと言い出して。そんな言い方じゃ、まるでこれが最後みたいな言い方・・・城戸、お前まさか・・・」
足を止めた影山が、私の肩を掴んだ。
『その・・・まさか、かな』
影「何でだよ!菅原さんだって、西谷さんは本気で言ったんじゃないって言ってただろ!」
『もう、いい。もしまた同じ事があったら、私きっと立ち直れないから。だから、まだ自分の足で立っていられるうちに・・・消えたい。だから、ゴメン・・・』
影「・・・勝手にしろ!」
『影山!』
肩を掴んでいた手を離し、影山は早足で歩いて行ってしまった。
影山が怒る気持ちもわかる。
でも、これが私の出した結論・・・だから。
体育館へ着くと、予想通り、3年生組は4人揃って中にいた。
私はシューズに履き替えることもせず、靴だけを脱いで4人の元へ歩いていった。
菅「紡ちゃん!今朝はどうしたの?!朝練休むって大地から聞いて、ちょっと心配したんだよ?」