第3章 小さな手のひらに大きな愛を (西谷 夕 ・特別番外編)
~ 紡 side~
夜通しずっと考えてて、あまり眠れなかった。
考えながらウトウトしては、また考えて。
今までの事、今日の事、明日からの事。
気が付けば外が明るくなっていて、いつもなら起きる時間になってもベッドから出ないでいた。
ー おーい!紡?起きてるか? ー
ノックも何もなしに、慧太にぃがドアを開けて部屋に入って来る。
『まだ寝てる!慧太にぃ、何の断りもなくドア開けて入らないでよ!』
慧「起きてんじゃねぇか。オレは桜太にお前を起こして来いって言われてんの、わかる?」
いつもなら桜太にぃが起こしに来るのに、なんで今日に限って慧太にぃが・・・
慧「いい加減に起きねぇと、ホレ!朝練遅刻すっぞ?」
布団を剥がされ、早く起きろと何度も揺すられる。
『朝練は・・・行かない。だからほっといて』
言いながら布団を奪い返し、頭から被った。
慧「朝練行かないって、新人マネージャーが堂々とサボるつもりかよ」
被った布団をまた剥がしながら、慧太にぃが言った。
『もう・・・いいの。私がいたら、邪魔になるから。だから、朝練とか、行かない・・・』
慧「お前さぁ、昨日からなんか様子が変だと思ったら、何をそんなに思い詰めてんだよ?桜太だって気にしてたぞ?弁当ほとんど食べてないとかよ」
大きく息をついて、慧太にぃが部屋のドアを閉めて戻って来る。
慧「で?悩みはなんだ?」
『悩んでないからいい・・・自分で、結論出したから』
慧「ふ~ん?・・・じゃあ、オレからひとつだけ・・・その結論で本当にそれでいいんだな?後悔してからじゃ、遅いぞ」
その言葉に、体が沈んでいく。
何も言わない私に、またひとつため息を吐いて慧太にぃはドアへと向かった。
慧「せめて、朝飯は食ってやれ。桜太がお前の食べそうなモン、テーブルいっぱいに並べてっからよ」
そう言って、慧太にぃは階段を降りていった。
後悔してからじゃ遅い・・・
そんなの、分かってるよ。
だから、後悔しないように・・・離れるんじゃん・・・
私は捲られたままの布団を直し、着替える為にベッドを降りた。