第3章 小さな手のひらに大きな愛を (西谷 夕 ・特別番外編)
スガさんが紡の手を引いて体育館へも入って来た。
大地さんから聞かされた話を思い出して、胸が痛む。
あの時、どんな思いをさせた?
どれほどの悲しみを思い出させた?
・・・どれだけ、比べられた?
悔やんでも悔やんでも、足りねぇ。
『はい!行ってきます!』
紡の声に思わず振り返ると、オレらの着替えが山積みにされたカゴを持つ姿が目に入る。
・・・ここからでも分かるほどの、泣き腫らした目・・・
歩いて行く姿を、自然と目で追ってしまう。
紡に何度オレは謝ったら・・・許して貰えるんだろうか。
ジッと見つめていると、体育館の扉を開けるために足を止めた紡と目が合った。
声をかけようか躊躇っていると、紡はぎこちなく頭を下げて、そのまま出て行ってしまった。
澤「西谷!!よそ見すんな!!」
「スイマセン!!」
スガさんと話をしていた大地さんに怒号され、意識をコートに向けた。
・・・結局その日の練習終わりまで、紡は何かと潔子さんや大地さんたちに用事を言い渡され、忙しく動き回っていた。
話す時間なんて、なかった。
だったら帰る時に、と思って影山より早く着替えて部室を飛び出すと、紡は見当たらない。
体育館の前に、潔子さんがいるのを見つけてオレは駆け寄り紡はまだ更衣室かと聞いた。
清「城戸さん、今日は1人で帰るからって・・・せめて影山が来るまで待とうって言ったんだけど。走って帰るから平気だとか言って、今さっき・・・」
そう言いながら潔子さんが心配する顔を見せた。
影「お疲れっした・・・城戸は?」
帰り支度を終えた影山が来て、姿が見当たらない紡の事を潔子さんに聞く。
影「あンのバカ!防犯灯が切れてる真っ暗な道通るだろうがっ!・・・スイマセン!俺も先に帰ります!」
既に帰ってしまったと聞かされた影山が、半ば怒りながら走って行った。
防犯灯の切れてる・・・真っ暗な、道・・・?
そんな事、オレは1度も聞いてない。
いや、違う・・・そんな事も、オレは知らなかったって事か。
澤「清水、と、西谷。深刻な顔してどうした?」
清「澤村・・・実はいま」
潔子さんが今までの経緯を大地さん達に話した。