第3章 小さな手のひらに大きな愛を (西谷 夕 ・特別番外編)
菅「あんまり、進まないみたいだね」
箸を持つ手が止まってばかりの私を見て、菅原先輩がそう言った。
『西谷先輩は・・・ちゃんと食べたんでしょうか・・・』
いつもはどれだけ食べるの?!って思うくらいたくさん食べる姿を思い浮かべ、もし、食べれてなかったらと思うと、尚更・・・食が進まない。
菅「気になる?西谷の事」
『・・・食べれなかったら、私のせいかな?って・・・』
菅「心配しなくていいよ。向こうには怖~い大地が着いてるから。あと旭もね」
澤村先輩は体調不良とかじゃない限り、ちゃんとしっかり食べるように側に座る事が多い。
そして、東峰先輩は・・・西谷先輩が絶対的信頼を置く先輩。
・・・だったら、大丈夫かな。
菅「だから、紡ちゃんもしっかり食べないと?」
『私は、なんかもういろいろいっぱいで・・・』
そう言いながら、お弁当のフタを閉めた。
菅「西谷と、仲直りしなきゃダメだよ?」
お茶を流し込みながら、ポツリと菅原先輩が呟いた。
『もう・・・いいんです。このままの方がきっと、西谷先輩は頑張れると思うから』
菅「そんな事を言うなって」
菅原先輩の言葉に、私はまた首を横に振った。
『嫌われたままでいい。嫌なヤツだった、面倒なヤツだった、そう思われたままの方が』
菅「ダメだろ、そんなの!」
『これでいいんです。そうすれば西谷先輩は、その事を糧にして・・・今よりもっともっとがんばれるし、私も頑張って欲しいから』
紡ちゃん、と、菅原先輩が頭を撫でた。
『さてと!つまんない話はおしまいです!菅原先輩は食べ終わりましたね?ごちそうさましましょう?』
無理やり元気を見せて、私は立ち上がった。
『あんまり遅れたら・・・怖~い澤村先輩のカミナリが落ちますよ?』
菅「そう・・・だ、ね」
私がそう言うと、菅原先輩は少し悲しげに笑って、お弁当を片付けた。