第3章 小さな手のひらに大きな愛を (西谷 夕 ・特別番外編)
『そうですよ!菅原先輩、お昼食べる時間無くなっちゃう・・・だから、戻って下さい』
菅「待った!見て?弁当なら、ここにあるから」
2人分のお弁当を掲げて、菅原先輩が笑っている。
『どういう事、ですか?』
菅「大地がね、清水に紡ちゃんの荷物開けて貰って持って行けって。だから、オレは鞄開けたりしてないよ?」
『そこじゃなくって、ですね・・・』
戸惑いながら返すと、菅原先輩は分かってるよ、と笑った。
菅「紡ちゃん、何も持たずに出て行ったし、なんか体育館にギリギリまで戻らない気がしたからさ?それに、食事と水分補給はちゃんとしなきゃ!って、いつも言ってるのは誰だっけ?」
・・・私です。
菅「ね?気持ちが落ち着いたところで、オレと一緒に食べよ?」
『・・・はい』
菅「じゃ、向こうの日陰行こうか?ここ直射日光で暑いし」
直射日光?
ここも多少の影が・・・そっか、そうだったんだ・・・
菅原先輩が私の隣にずっといたのは、私に日が当たらないように・・・してくれてたんだ。
『菅原先輩・・・ありがとうございます』
菅「別になんにもしてないよ」
ニコニコと笑う菅原先輩の腕や首元が、日に当たり続けていたせいで、薄らと赤くなっているのが見えた。
『でも、折角の白い肌が・・・こんなに赤くなって』
菅「あのねぇ、結構それ、オレが気にしてるとこ!男が白い肌とか、大変なんだよ?こう、なんつーか、軟弱に見えるみたいでさ?ちゃんと鍛えてるつもりなのに」
ちょっと拗ねたフリをしていう菅原先輩に、思わずクスリと笑ってしまう。
菅「・・・笑ったね?」
『あ、ごめんなさいっ』
菅「やっぱりオレは、紡ちゃんがいつも笑ってくれてる方がいい。それが、例えオレの隣じゃなくても、さ?」
『精進します・・・』
菅「何それ~、とりあえず早く手を洗って食べちゃおうか?少し遅れるくらいは大丈夫だけど、あんまり遅いと大地のカミナリが落ちるからね、オレに」
あんまり、食べたくはないけど・・・
それでも菅原先輩には食べて貰わなきゃ困るから、前を歩き出す背中に着いていく。
食べたら・・・体育館に戻るのかと思うと気が重い。
そんな事を考えながら、私は菅原先輩と一緒にお弁当を広げた。