第3章 小さな手のひらに大きな愛を (西谷 夕 ・特別番外編)
澤「やっと、気付いたか。さっき西谷がした事は、そういう事だ」
「・・・はい」
静かな口調で話す、大地さんの言葉のひとつひとつが刺さって行く。
澤「それからな、西谷。お前が猛烈アピールを始めた頃は・・・あの子はまだ元カレの事を好きだったハズだ」
「えっ・・・?」
澤「俺はちょっと込み入った所までは知ってるが、そこを知らないスガが、どれだけ大好きアピールしても、閉ざされた心の鍵は開かなかったんだよ。なのにお前は、その鍵を簡単に開けた」
「簡単になんて!」
紡と一緒に並んで歩けるようになるまで、決して簡単な道のりじゃなかった。
最初の頃なんて、オレががっつき過ぎて怖がられてたからな。
声をかければ、影山や山口の背中に隠れられたり。
その2人がいなきゃいないで、スガさんや大地さんの影に隠れて・・・
でも、それがある日から少しずつ変わって行って。
龍が、押してばっかじゃ怖がられてんだろ!って言うから、たまたま何も声をかけない休み時間を作った。
そしたら昼休みに・・・紡がオレの教室まで来た!
・・・影山とだけど。
で、何事かと思ったら。
『今日の休み時間に、もし西谷先輩が来たら渡そうと思ってて・・・でも、今日は会えなかったから。昨日作ったんです。もし良かったら、どうぞ?』
そう言って手渡されたのは、保冷剤に囲まれた、キンキンに冷えたイチゴゼリー。
オレは超感動した!!
で、思い切って弁当一緒に食べようと声をかけたら、少し迷って一緒に食べる事が出来た。
・・・影山も一緒にだったけど。
それから少しずつ距離が縮まって、結果・・・
隣で一緒に歩けるところにまで、来たんだけど。
・・・オレ、馬鹿だ。
ここまでの道のりがどれだけ一生懸命だったか、もう・・・忘れちまってた。
絶対大事にする!って、約束・・・したのに・・・