第3章 小さな手のひらに大きな愛を (西谷 夕 ・特別番外編)
旭「え、あ・・・わかった・・・」
旭さんが返事をしてる途中で、体育用具室の扉がピシャリと閉められる。
澤「西谷、城戸さんの事・・・どれくらい知ってるんだ?」
「どれくらいって言われても・・・」
オレがそう答えると、大地さんは大きくため息を吐いた。
澤「例えば・・・元カレの話、とか」
紡の元カレ?
「青城にいる、とかくらいなら」
澤「それだけか?」
「まぁ・・・詳しい事は何も。別に元カレがどうのとか、オレには関係ねぇッス」
澤「そうだな。過去の事は、確かに西谷には関係ない。でも・・・さっきのお前の言葉は、かなりのダメージを与えたって言うのは、分かるな?」
その言葉で、紡の傷付いた顔が浮かんできて・・・苦しくなる。
澤「今から話す事は、俺とスガと、それから影山しか知らない事だ。だから・・・覚悟して聞け」
それから大地さんは、紡がなぜバレーを離れていたか、どういう経緯でここでマネージャーをやっているのかを話してくれて。
その話の中には・・・当然のように、元カレのこともあって。
・・・別れた理由も・・・聞かされた。
「なんスかそれ!!バレーやる為に終わりにす・・・」
待て。
オレ・・・さっき紡になんて言った?
モヤモヤして、イライラして・・・
練習ミスるし・・・とか?
それ、から、
ー バレーをやるのに、私は邪魔・・・って事ですか? ー
ー ・・・・・・そう、かもな ー
オレ・・・知らなかったとはいえ、なんて事を・・・
急速に心が凍り付いて行く。
ー 西谷先輩の言いたいことは、分かりました。だから、ゼロに・・・戻りましょう?そしたら、好きなだけバレーに打ち込めて、1つでも先の未来へ進めるから ー
ー 城戸!! ー
ー いいよ、影山。心配しなくて大丈夫だから。こんなの、1回経験してるから・・・大丈夫・・・ ー
1回経験してるって、そういう事なのかよ・・・
そいつとオレを、重ね合わせてたのか?
ゼロに戻るって、なんだよ・・・
オレ達まだ、« 1 »にもなれてないのに。
1つでも先の未来へ進めるって、なんだよ・・・
オレが目指す未来に、紡がいなきゃ・・・意味ねぇだろ!!
「大地さん、オレ・・・」