第37章 桜満開の心 ( 伊吹 梓 )
及「お姉さんも、あの時と変わらず・・・キレイなお姉さんだと思うけどなぁ、オレは」
岩「てめぇはさっきまで気づかなかっただろうがよ」
『そうそう。でも、また会えて良かった』
及「やっぱりお姉さんは、笑ってる方がいいと思うよ?って、あれ?お姉さん、結婚したの?」
何気なく口元にやった手を見て、及川くんがキラリと目を輝かせる。
及「相手はもしかして、あの時お姉さんを泣かせた人とか?」
『あ・・・えっと、違う、かな』
別に隠すつもりはなかったけど、あまりに及川くんが結婚指輪に釘付けになるから、そっと手を後ろに持っていった。
岩「及川・・・お前ホント、デリカシーの欠片もねぇのな。だからいつまでたってもクソ川なんだよ」
及「ちょっと岩ちゃん!いまそれ関係なくない?!」
相変わらずなやり取りに笑いが込み上げて、つい、笑いだしてしまう。
『今日、ここに立ち寄ってみて良かった。なんか元気出ちゃった、ありがとう』
ペットボトルを鞄に押し込みながら言えば、及川くんが私の肩にポンっと手を乗せる。
及「もう少ししたら、決勝戦始まるんだけど見てかない?」
『決勝戦?』
及「そう、決勝戦。オレたちが出るんだよ」
『そうなの?!凄い!でも私・・・』
及「勝つよ、オレたち」
自信に満ちた及川くんの瞳に引き寄せられるように、私は頷いて・・・今降りてきたばかりの階段を、また上がった。
さっきと見ていたコートとは違うコートだったから、私も試合が見やすい場所まで移動して席を確保する。
フラリと立ち寄った場所で、偶然にもバレーボールの大会が行われていて。
あの人を思い出しながら、試合を見て。
それから、あの人によく似た女の子を見掛けて。
・・・及川くんと岩泉くんと再会して。
出会いの歯車って、どこでどう噛み合うのか分からないものだなと目尻を下げたところで、試合が始まるのか、さっき見たユニフォーム姿の2人が会場内へと出て来る。
『ふふっ・・・ちゃんと集中しなさい?』
観覧席にいる私を見つけた及川くんが大きく手を振るのを見て、岩泉くんが制裁を下す。
そんな2人が、カワイイと思えてしまう私も・・・どうなんだろ?と笑いながら手を振り返してみた。
それから幾分と待たずに彼らの試合が始まり、その熱戦に煽られて、私も手に汗握るほどのめり込んで応援していた。