第37章 桜満開の心 ( 伊吹 梓 )
「どうせまた、あの野郎の事が気になってたんだろうが!いいか?何度も言うけどな、目の前の敵を倒せなきゃ、アイツとは戦えねぇんだよ!分かったかクソ川!!」
え・・・?
「もう!岩ちゃんってば、その呼び方やめてって言ってるじゃん!」
「仕方ねぇだろうが!クソ川って呼ばれたくなけりゃ、コートの中できっちりお前の仕事をしろや!このボケ川!」
「あーっ!また悪口?!」
うそ・・・もしかして、いまの2人って・・・
『及川くんと・・・岩泉、くん?!』
「えっ?!」
「あぁ?」
自分では小さく呟いたつもりが、実際はそうでもなかったらしく。
及「お姉さん・・・どっかで会ったこと、ある?」
あの頃よりずっと背丈が大きくなった及川くんが、不思議そうな顔で私を見る。
『あのままずっと、バレー続けてたんだね?北川第一中学校の、及川くん』
及「オレの出身中学校を知ってるとか・・・もしかしてオレのファン?あ、握手とかしちゃう?それともハグっちゃう?」
もう、何年も前のことだから忘れちゃってるか。
偶然、通りの曲がり角でぶつかって、少しだけ話しただけだもの。
『これから試合?頑張ってね!』
そう言って背中を向けると、グンッと腕を引っ張られて、また、振り返る。
岩「アンタ・・・もしかしてあの時の」
『思い出してくれたんだ?』
フフッ・・・と笑って見せれば、岩泉くんはそれを見て少し照れたように笑った。
及「え?岩ちゃんの知り合い?ちょっと岩ちゃん!こんなキレイなお姉さんと知り合いだったらオレにも紹介してよ!ねぇったらねぇ!」
岩「ボケ川・・・お前、ホントにまだ気付かねぇのか?お前が言ったんだろうが・・・今度会うときは、キラッキラの笑顔を見せろ、とかなんとか」
あぁ、そういえば確かにあの時。
別れ際に及川くんが言ってたっけ。
岩泉くんは、そんな事まで思い出してくれたんだと、また笑った。
及「今度会う時?キラッキラの?・・・・・・あぁっ!あの時のキレイなお姉さん?!」
『正解!キレイかどうかは別として、だけどね?でもびっくりした・・・たまたま入った場所がバレーの大会をしてる会場で。それに、及川くんと岩泉くんにまた会えるだなんて思ってもなかったから』
2人はあの時のまま仲良しなんだね?と言えば、及川くんは当然!と笑ってサラサラの髪を掻き上げる。