第37章 桜満開の心 ( 伊吹 梓 )
「マジで?!オレこんなキレイなお姉さんが応援席にいたら、ドキドキソワソワだよ!」
「試合に集中しろや!このボケ川!」
「だからゲンコツは・・・って、あれ?ゲンコツ来ない・・・」
「そんなにして欲しいなら、今からでもやってやるが?」
「謹んでお断りします!!!」
ゲンコツを構える男の子から逃げるように、私の後ろにサッと隠れる姿に笑ってしまう。
本当はもう、バレーなんて見たら桜太を思い出してしまいそうだけど。
それでも、この2人がどんなプレーを見せてくれるのかも、楽しみになってきて。
北川第一中学校、男子バレー部か・・・
心のどこかに、書き留めておこう。
そんな風に思えた。
『なんだか君たち2人を見てたら元気出てきたかも。ホントにありがとう、えっと・・・』
「岩泉。こっちは及川だ」
ぶっきらぼうに名前を教えてくれて、私は小さく頷く。
『じゃあ、岩泉くんに及川くん。キラッキラの青春を楽しめるように頑張ってね!』
及「お姉さんも、今度また会える時があったら・・・キラッキラの笑顔、オレに見せてよ?」
岩「イチイチ口説くんじゃねぇ!・・・まぁ、アンタは泣いてるより、笑っとけ」
『うん・・・そうする。じゃあ、行くね』
バイバーイ!と及川くんが大きく手を振る横で、岩泉くんがジャージのポケットに手を入れたまま頷く。
別れの後に、新しい出会いがすぐ訪れたってのもおかしな感じだけど。
それでも、彼らの思いやりに胸の奥がほんわかとされた。
泣くだけ泣いて。
喚くだけ喚いて。
お腹いっぱい食べて。
ぐっすり寝て・・・
そしたらきっと、明日からはいい事があるんだ。
彼が言っていた事をひとつひとつ思い出しながら歩いて、夕焼けの紅色から蒼色へと変わって行く空を・・・そっと見上げた。