第37章 桜満開の心 ( 伊吹 梓 )
「腐れ縁ってなにさ!あれ?そういえばお姉さん、オレたちの何を見て、バレーやってるってわかったの?」
『何って・・・それ、かな?』
ジャージに刺繍された排球部って部分を指さして言えば、これ見てすぐ分かるなんて、お姉さんもバレー関係者?なんて顔を覗き込まれる。
『私はそういうのじゃなくて。桜太が・・・あ、えっと・・・知り合いが高校までバレーやってたから、かな?』
人懐っこい男の子に聞かれて、つい、桜太の名前を口に出しかけて、やめる。
「ね、それってさ、もしかして彼氏とか?」
『う〜ん・・・正確には、だった、の方かな』
「別れたってことか?」
『うん・・・まぁ・・・そう、なるかな』
たどたどしいしく答えれば、そこに微妙な空気が流れてしまって。
「振られちゃった、とか?」
「おい!」
『違うよ・・・お互いにちゃんと前見て歩けるように、私から』
なんで、初めて会う人に、しかも見るからに年下の男の子たちに、素直に答えてしまってるんだろうとは思っても、そこは嘘や誤魔化しで避けて行く訳にも行かないから、ちゃんと答えてしまう。
「そうなんだ・・・でもさ、お姉さんってその人のこと、まだ好きでしょ?」
「お前なに聞いてんだよ!」
「だって絶対そうだもん!お姉さんがその人のことを話す時、凄い優しい目で話してたから」
『アハハ・・・そうかも。でもね、どうにもならない事もあるんだってのも、大人になったらきっと君たちにも分かる時が来るよ。悩んで、迷って、泣きたくても泣けなくて。だけど、その決断をしなけゃ前には進めないんだって日が、きっとこれから先・・・あると思う』
私の場合は、ただ、その決断をする事で苦しさから逃げただけかもなんだけどね?と付け加えて笑って見せれば、強面の男の子が1歩前に出て私の頭を急に撫でた。
「アンタ、泣きたきゃ泣けばいいだろ。どんなに辛くて苦しい決断をしても、泣けるだけ泣いて、喚くだけ喚いて、腹いっぱい飯食って、寝て・・・明日になったらきっと、これからいい事があるんだって思えるだろ。俺らがここで会って話してんのも、その延長線だと思えばいい」
「そうそう!明日はきっと、明日の風が吹くってやつだよ!」
『ありがとう。いつかもし、バレーの試合を見ることがあったら、君たち2人のことを応援するね』