第3章 小さな手のひらに大きな愛を (西谷 夕 ・特別番外編)
菅「紡ちゃん大丈夫?!多分いまのは違うから!本音じゃないから!ね?」
澤「西谷、言い過ぎだぞ」
・・・そんな事は、わかってる。
だけど。
だけど、もう・・・後戻りなんか・・・出来ねぇ・・・
『西谷先輩の言いたいことは、分かりました。だから、ゼロに・・・戻りましょう?そしたら、好きなだけバレーに打ち込めて、1つでも先の未来へ進めるから』
影「城戸!!」
『いいよ、影山。心配しなくて大丈夫だから。こんなの、1回経験してるから・・・大丈夫・・・』
1回、経験してるから?
何のことだ?
『澤村先輩、それから皆さんも。お騒がせしてすみませんでした。私いま、あんまりここにいたらダメっぽいから、ちょっと・・・頭冷やして来ます』
深々と頭を下げて、紡はそのまま体育館を出て行った。
澤「西谷、お前ホントにいろいろ言い過ぎだぞ。しかも、終わりにするとか・・・あんなにお前の方が執着してたのに」
「別に、あれは売り言葉に買い言葉で・・・ホントに終わるつもりじゃ・・・」
菅「紡ちゃんは、そうは思ってないよ・・・大地、オレ紡ちゃんのとこ行ってくる。昼休憩だってのに、何も持って行ってないし・・・オレ、居場所は分かるからさ」
澤「だな。俺が行くよりスガの方がいいかも知れないな。荷物開けるのは、清水に頼めばいい」
菅「じゃ、行ってくる」
澤「こっちは任せろ」
紡の弁当やマグボトルを潔子さんから受け取って体育館を出るスガさんを、ずっと目で追っていた。
結局、ここにいるみんなは紡が好きで、構いたくて。
紡だって、それに甘えてるじゃねぇか。
オレじゃなくても・・・
痛いくらいに両手を握り締める。
澤「西谷、お前には話さなければいけない事がある」
「説教なら、別にイイっす・・・」
澤「違う。本人に許可なく話すのは、俺もどうかとは思うが・・・でも、お前には、聞く権利はあると思う。ちょっと来い」
大地さんはそう言って、オレの襟元を掴み歩き出した。
旭「おい、大地!何があるのか分からないけど、お前も落ち着けよ」
誰が見ても怒ってるのが分かる大地の表情に、旭さんが止めに入る。
澤「旭、お前は来るな。俺とスガが抜ける間、旭がみんなといろ・・・分かったな」