第37章 桜満開の心 ( 伊吹 梓 )
予想も想定もしていなかった人物との再会に言葉が出なかった。
和「教育実習に、ちょっとな」
『教育実習にって···確か目指してたのって···』
教師じゃなかったと思うけど?
あの頃の和泉君は、既に小学校、中学校での長期休暇でホームステイなどを経験していて英語は抜群だったし、それに伴って弁護士になるんだとか、外交官への道が···とか。
確かそんなような事を言っては、私に未来の自分の側には伊吹さんがいるんだって、私や桜太を困らせてたけど。
和「いろいろあって、ね。結果、教師になる事にしたんだ。その為には実習が必須で、だからここで」
『そう、なんだ?じゃあやっぱり英語教師?』
和「ま、そんなトコ。それより、中に用事だろ?入った入った!」
その後は和泉君の案内で職員室へ入り、当時の顧問や担任の先生と歓談して、そして。
和「オレも今日はこれで帰るんだけどさ、よかったら食事でもどう?」
食事···
あまりにも軽く簡単に誘われて、なんとなく学生時代のいろいろな事が頭に浮かび眉を寄せてしまった。
和「あぁ、そう警戒しなくていいって。オレだって昔のままじゃないし、あの頃みたいに城戸からキミを奪おうとか考えたりしてないさ」
昔は昔、今は今!
食事くらいならいいだろ?なんて笑う和泉君を見て、次第に警戒心も解けて行った。
『じゃあ、少しだけなら···』
ただ単に、昔の級友···まぁ、和泉君とはクラスも違ったけど、そんな懐かしい顔の誘いを受けて、ちょっと食事くらいならいいかな?って思ったけど。
この時の私には、まだそれが···更に自分が苦しい思いをする事に繋がってしまうとは考えてもいなかった。