第37章 桜満開の心 ( 伊吹 梓 )
桜「やっと···追いつけることが出来た」
切れた息を整えながら言って、城戸くんが隣に座る。
『私がここにいるって、どうして···』
城戸くんにも、誰にも言わずにこっそり見に来てたのに、それなのに城戸くんは私に···追いつけることが出来たって···
桜「試合、何度も見に来てくれてたから」
『うそ···だって学校優先席にはいなかったし!』
桜「それも、知ってる。初めて見かけた時は、たまたま似てる人がいるのかと思った。けど、どうしても気になって、気が付けば何度も探していて、それで···伊吹さんだって分かった。見に来るなら教えてくれても、よかったんじゃない?」
そしたらもっと、カッコいいところ見せられたのにな?って城戸くんが笑って。
夕日が城戸くんを照らしてて。
息が止まるほど、キレイで···
思い出にするなら、この景色がいい。
そう、思ったから···
『私、城戸くんが』
···好き。
言うのと同時にホームに電車が入って来て、私の一大決心なんて轟音に掻き消されてしまう。
やっぱり···そういう事なんだよね。
私が城戸くんと···なんて、きっと高嶺過ぎて。
だから、伝えたい事も、伝えたい気持ちも···伝え切れない。
···思い出にすら、させて貰えないんだ。
悲しさと辛さで俯く私に、城戸くんがちょっとだけいいかな?と顔を覗く。
桜「前にさ?どこかの誰かが、ゼロから始まる恋愛もあるって豪語してたけど···」
『うん···和泉くんが、って、聞いてたの?!』
あの時は確か、あの場には私と和泉くんしかいなくて。
その後に城戸くんが現れて···だったのに。
桜「あー···まぁ、とりあえず聞いてよ?」
苦笑を見せる城戸くんに頷き、言葉の続きを待つ。
桜「その誰かはそう言ってたけど、俺と伊吹さんってさ···もう、ゼロじゃないと思うのは俺だけかな?なんて」
『どういう、意味?』
言葉に含まれる意味が飲み込めず、瞬きをしながら城戸くんを見る。
桜「奇遇だね···俺も伊吹さんの事が」
ー 好きだ ー
いま、なんて···言ったの?
私の聞き間違い?
聞き慣れない突然の言葉に固まっていると、ベンチで触れ合う指先をキュッと掴まれる。
桜「だから、この先ずっとずっと隣にいてくれると嬉しいんだけど···な?って」