第37章 桜満開の心 ( 伊吹 梓 )
あ、そうか!
たまたま近くにいるのが城戸くんだから、それで比較対象が城戸くんになっちゃうんだ??
『とにかく、お断りします。今はそういうの興味無いし、私にはまだまだやりたい事があるから。だから、ごめんなさい』
キッパリと言って、早く作業をする為に芸術科の校舎に戻ろうと背を向け歩き出した。
和「待って。オッケー貰えるまで諦めないから」
グッと腕を捕まれ、引き戻される。
『何を言われても、私はあなたの事をよく知らないし、そんな自分主体で言われても困ります!』
和「ゼロから始まるって事もあるだろ?」
『私は和泉くんとは違うから!···離して!』
和「それこそ断る」
掴まれた腕をどれだけ振っても離される事はなく、こんなにも強引にしたら、私じゃなくても断られるでしょ!と言っても、通じなかった。
「その手を離せよ、和泉。嫌がってるだろ」
突然の声にハッとして顔を上げる。
和「城戸···悪いけど邪魔しないでくれよ」
桜「邪魔?こんなにも嫌がってるのに、見て見ないふりなんて俺には出来ない···離せよ。それとも、この現状を生活指導にでも報告しようか?」
臆することも無く堂々と言う城戸くんに、和泉くんはチッ···と小さく舌打ちをして私を押し離すように解放した。
和「お前が来たから興醒めした。けど、オレは諦めないからね、伊吹さん」
まるで吐き捨てるかのように言って、和泉くんが立ち去る。
『はぁ···びっくりした···』
ペタンと座り込み、思い切り息を吐く。
桜「大丈夫?あんな感じだけど、和泉はそれほど悪いヤツじゃないから」
···そうだろうか?と一瞬思ったけど、城戸くんがそう言うなら、きっとそうなんだろうと言葉を飲み込む。
『そう言えば、どうしてここに?今日、部活は?』
時間帯からして、バレー部はとっくに練習が始まってると思うのに···と言えば、城戸くんはスッと視線を外して口元に手を当てながら話し出した。
桜「休んでいた時の分のレポートを提出しに行った時に、和泉の取り巻き女子が話してるのを聞いて、ね」
『なにを?』
桜「和泉が遂に伊吹さんを呼び出したって。それを聞いて、何となく胸の奥がザワついて芸術科のクラスに行ってみたら既に伊吹さんはいないし、課題室に行ったら、用があるって屋上へ行ったって聞いて、それで」