第37章 桜満開の心 ( 伊吹 梓 )
『ちょっとびっくりしたけど、いまはそんな事より妹さんのことを優先しましょう』
2人の顔を交互に見ながら言えば、城戸くん···城戸桜太くんが、それは確かにと言って家の中に入れてくれた。
2人の城戸くんに案内されて、妹さんの部屋へと入る。
可愛らしいベッドの中では、真っ赤な顔をして荒い呼吸を繰り返す小さな女の子が横たわっていた。
慧「どうする桜太。医者、連れてくか?」
桜「そうだね···母さん達には?」
慧「メールだけはした。研究室にいたら、電話してもアレだろ?」
研究室?
城戸くんの御両親は、どこかの研究室で働いているのかな?
桜「そうだね。でも、こんなに苦しそうなら動かすのは無理っぽいし、来て貰った方がいいね···ちょっと俺が電話対応してくるから、慧太はここを頼む。伊吹さんもちょっと慧太と一緒に紡の側にいて貰っていいかな?」
『分かった。ここで様子を見てる』
紡「おぅちゃん···どこいくの?」
城戸くんがベッドから離れようとすると、目に涙を浮かべた妹がさんが城戸くんを呼び止め、小さな手を伸ばして空を掴もうと何度か動かし、それに城戸くんが動揺するのを感じた。
咄嗟にベッドに近寄り、空を彷徨う小さな手を包んだ。
「紡ちゃん、大丈夫だよ。お兄ちゃんはすぐ戻ってくるからね?それまでは私が、ずっとそばにいてあげるから」
紡「おねえちゃん···だれ?」
『私は···お兄ちゃんのお友達。だから心配しなくていいよ?』
そっと頭を撫でながら城戸くんを見上げ、視線だけで今のうちに早く···と促すと、城戸くんは小さく頷いて階下へと降りていった。
それにしても。
見るからに高い熱がありそうなのに、布団···掛け過ぎなんじゃないかな?
確か熱が高い時は、体に籠った熱の逃げ場を作らないと···とか、私が高熱を出した時に病院の先生が言ってたんだけど···
そっと布団をずらして見れば、弟くんが着せたのか数枚の重ね着さえ見える。
『あの、これって誰が重ね着させたの?』
弟くんに聞けば、自分がベッド寝かせる前に熱を下げるには汗をかかせるのが早いだろうと思って着せたんだと返ってきた。
『ちょっとだけというか、かなり着せ過ぎだと思うんだけど、調節してもいい?』
慧「マジか···じゃあ、それはアンタに頼むわ」
『それから氷枕と濡らしたタオルお願い』