第36章 そして朝日はまた昇る ( 城戸 桜太 )
澤「でも!さすがに申し訳ないって言うか···」
「じゃあ、今度その見返りに俺や慧太も紅白戦に混ぜてくれない?セッターは烏養がやるから、そっちはいつものメンバーに菅原君も入れてツーセッターでって言うのはどうかな?ね、悪い話じゃないだろ?」
『桜太にぃ達が混ざって紅白戦するの?それってなんか楽しそう!私も桜太にぃのチームに入りたい!ハゲつる繋心がセッターやるなら、私も!』
嬉々として言う紡を見て、澤村君が二つ返事で承諾してくれる。
「じゃあ、近いうちに慧太も連れてここへ来るから」
澤「あ、はい!よろしくお願いします!それから、ごちそうさまです!」
みんなと坂ノ下商店で別れて、紡と家までの道のりを歩く。
途中のスーパーでお弁当の材料やちょっとしたものを買って店を出た所で慧太とばったり遭遇する。
慧「よ、おふたりさん。仲良くいま帰りか?」
「まぁね、羨ましい?」
フフン···と軽く鼻で笑えば、慧太はニヤリと笑って俺を見る。
慧「そのセリフ、そっくりそのまま返してやるぜ?おい、紡···コレな~んだ?」
慧太が見覚えのある箱を紡の前にチラつかせると、それに反応して紡が歓喜の声を上げた。
『もしかして今日のデザートに出る?!』
慧「モチのロン!」
『やったぁ!慧太にぃナイス!大好き過ぎる!!』
パッと俺の側から離れた紡が慧太に抱き着く。
慧「どうだ桜太、羨ましいか?ん?」
チッ···やられた。
そう言えば今朝、慧太があのケーキ屋に行くと言ってたな。
城戸桜太···不覚なり。
とは言えど、こっちも慧太に負けてはいられない。
仕方ない、奥の手を使うか。
鞄に手を入れ、学校に行く前に寄り道した紡のお気に入りの雑貨屋の袋を取り出す。
「紡、これ見て?なんだと思う?」
軽く紙袋を揺すってカサカサとさせれば、紡はその袋が雑貨屋の物だとすぐに認識して慧太から離れた。
『これ私にくれるの?開けてみてもいい?!』
「いいよ。開けてごらん?···気に入るといいけど」
気に入るかどうかなんて、結果は分かってる。
なんせ今日発売したばかりの、可愛らしいパンダさんのぬいぐるみストラップだからね。
その辺のチェックは抜かりない。