第36章 そして朝日はまた昇る ( 城戸 桜太 )
『わあっ···カワイイ!!凄いカワイイ!!やっぱり桜太にぃが1番大好き!』
よし···1番は貰った。
「慧太、そろそろ白旗上げたら?」
勝ち誇った顔をしながら慧太に言えば、今日は1番かも知れないけど、明日は分からないからなと突っ返された。
「負け惜しみ?」
慧「うっせぇな、この···シスコンが···」
「大変名誉な称号をありがとう」
パチンと手を交わしながら慧太と笑い合う。
『え、なに?なにかたのしいことあった?』
そんな俺達を交互に見て、紡が小首を傾げてパンダさんを撫でる。
「「 いいの、紡は分からなくて 」」
思わず言った言葉が慧太とシンクロしてしまい、また笑い合う。
『双子って、変なの···時々同じ事を一緒に言うよね···』
慧「お前なぁ、オレだって別に好きで桜太と双子やってんじゃねぇよ」
「こっちこそだけどね」
『もう!ケンカはダメなんだからね!母さんもよく言ってたでしょ!ほら、みんなで仲良く家に帰ろうよ···お腹すいたし』
俺と慧太の間に、小さな影が入り込む。
『は~や~く!』
慧「へいへい。ったく、お前は体がちっちぇクセに胃袋デカいんじゃねぇのか?」
『違うし!慧太にぃはいつもそうやって変なことばっかいう!』
慧「母さんの言いつけでケンカはダメなんじゃなかったのかよ」
『今のは違うもん!慧太にぃが悪いんだもん!!』
「また慧太はそうやって構うんだから···ほら、紡?」
軽く肘に隙間を作れば、そこに戸惑うことなく絡ませてくる細い腕。
慧「じゃ、オレも。ほれ!」
同じように慧太も肘を浮かせ、そして紡も同じように腕を絡ませる。
これが、俺達のいつもと変わらない日常。
フッ···と笑って空を見上げれば、いつの間にか小さな星々が瞬き出していた。
「明日も天気は良さそうだね。洗濯日和だ」
ひとりそう呟いて、隣を歩く小さな温もりに目を細めた。
~ END ~