第36章 そして朝日はまた昇る ( 城戸 桜太 )
武「おや、城戸さんのお兄さんじゃないですか」
繋「ゲッ···桜太···」
体育館の前に足を運べば、それぞれの歓迎方に出迎えられる。
「こんにちは武田先生、紡がいつもお世話になってます。あぁ、そうだった···烏養もな」
繋「お前、オレだけ扱い違くねぇか?!」
「···お前って、俺のこと?」
繋「あ、いや、お、おお、桜太···」
俺を見てジャージのズボンを引き上げなから数歩下がる烏養を笑いながら、慧太じゃないから安心しろよと告げる。
「それはそうと、練習はもう終わりですか?」
空っぽになった体育館をチラリと見て言えば、武田先生が今日は特別に早上がりになったんですと頭を掻いた。
「そうなんですか、じゃあ···ある意味、ちょうど良かったのかな?」
武「ちょうど良かった、とは?」
「えぇ、仕事帰りにここへ寄って運が良ければ練習を見学させて貰って紡と帰ろうかな?なんて」
まぁ、練習自体は烏養が責任持って見てるんだから何も口出しはしないつもりだけど。
···あくまで、つもりだけど。
『あれ?桜太にぃどうしたの?』
「お疲れ、紡。いま帰りで、今日は車使わずに行ったから学校に寄ったら紡と帰れるかと思ったから」
『そうなんだ?じゃあ···仕方ないから一緒に帰ってあげる』
「ふふっ···じゃあ、仕方なく一緒に帰らせて貰おうかな?」
仕方なくなんて言いながらも、その手はバッチリ俺の腕に絡ませていて。
そんな小さな事でさえ、日常の幸せとして感じてしまう。
菅「こんにちは、桜太さん!って、あー!!紡ちゃんと腕組とか超羨ましい···」
澤「アホかスガは···」
「みんなもお疲れ様。今日は早く終わったんだってね?ちゃんと寄り道しないで帰りなよ?体を休める事もしっかりやっとかないとダメだからね?特に、影山君?」
影「···ゥス」
普段から紡に影山君が凄く練習してる事を聞かされているから、チクリと釘を刺す。
澤「よし!じゃあ今日は坂ノ下商店で俺が肉まん奢ってやるから、そこでちょっと駄弁るか!」
「あぁ、それなら俺がひと口乗るよ、はい、軍資金。肉まんだけと言わず、ドリンク付きで」
スっと財布から数枚の千円札を出して澤村君に握らせる。
「しっかり休んで、明日からまた練習ね?」