第36章 そして朝日はまた昇る ( 城戸 桜太 )
立「おやおやぁ?もう1本いっちゃいますか?じゃ、オレもっと」
同じように1本出して火をつけ、ほぼ同時に立花先生が煙を吐き出す。
「とりあえず言っておきますが、紡はまだ高校生です。立花先生がどれだけ素晴らしいドクターであっても、お譲りすることは出来ませんからね。というか、例え両親が快諾しても俺が許しません」
もし、万が一があったとして。
隣にいる優秀なドクターが俺の義兄になるとか···そんなの···そんなの···
俺が一生···立花先生に弄ばれるじゃないか!!
···なんて事は言葉には出来ないけど。
紡には、紡が選んだ道を、紡が選んだ人と···歩いて欲しいと思うから。
···俺の時とは違って。
大切だと、心から愛を誓える人と···一生を、共に。
なぁ、梓。
キミも、そう思うだろ?
だから、俺は紡の1番近くで。
梓は、空の上から。
紡のこれからを、見守って行こう。
そしていつかまた、巡り会えたら···
その時は今度こそ、その手を離したりはしないと···誓うよ。
紅く染まっていく夕焼け空に、そっと小指を伸ばす。
その指に、ふわりと風が絡んで···まるで指切りを思わせるような感覚を覚えて軽く目を閉じた。
立「さて、と。戻ったら終業時間か···城戸先生は真っ直ぐ帰るのか?だったら···」
「帰りますよ。真っ直ぐ直帰ではないですけど」
立「おっ?!怪しいなぁ、キレイなオネエチャンのトコに寄り道か?」
「違います。どちらかと言えば、キレイなお姉さんに育つ確約がある妹の学校に寄るんです。一緒に帰ろうかと思って」
立「すげー確約だな、そりゃ」
「当然ですよ。俺の大事な妹ですから」
立「あとオレの花嫁候補な」
「認めません。ダメです、絶対!」
2人で笑い合いながら階下へ降りていく。
ナースセンターに足を運び、準夜の先生との申し送りを終えてからロッカールームへと移動して帰りの支度をした。
時計を見て、学校へ着く頃は少し部活の様子を見れる時間くらいはありそうだな。
そう小さく笑って、職員通用口の扉に手を掛けた。