第36章 そして朝日はまた昇る ( 城戸 桜太 )
「シュークリームと···缶コーヒー。あ、そう言えば俺、立花先生から頂いたコーヒーも飲みかけのままで···」
食堂で受け取り、ひと口だけ口を付けた缶コーヒーの存在を思い出し慌てて謝った。
立「いーのいーの!急患だったんだからさ?ついでに言えば、あのコーヒーはオレの腹ん中に収めといたし?」
「え···飲んだんですか?っていうか、俺ひと口飲んじゃってましたけど?!」
確かに受け取った後にプルタブを開けて···飲んだよな?
立「だってもったいないじゃん?それにナースに大人気の城戸先生と関節キ、」
「やめてください、ホントそういうの···」
言葉を途切れさせるように言って、全く立花先生は···とゲンナリした姿を見せると、立花先生はゲラゲラと大げさなくらいの笑い声を上げながら俺の肩をバシバシと叩いた。
立「で、どうなのよ?患者の容態は」
「あぁ、はい。あれからすぐ処置をして、容態は落ち着きました。今のところ何も急変はないので、もう大丈夫ですね」
あれから数時間経っているし、母親もずっと側にいるって言うのを担当ナースから報告はされていた。
立「なら、良かったな。じゃ、ちょっとここ離れても平気だろ?屋上付き合わない?」
喫煙ポーズをしながら言う立花先生に、1本分位の時間ならと了承して簡易ロッカーから自分の物を取り出した。
誰もいない屋上に、2人で紫煙を燻らせる。
その間、立花先生は何度も大きく伸びをしては肩を回したりしていて。
「立花先生もお疲れの様ですね?」
立「まぁね。さっきまでは外来にサッカー部の子が来てバタバタしてたから。練習中に部員同士で接触して転倒。レントゲン撮ったら僅かだけど骨折があってね、3年生で大会前だとか言ってたっけ···可哀想になぁ。オレも出来る限りの事はしたけど、大会には間に合いそうもなかったよ」
遠くを見つめながら言う立花先生を見て、部活中のケガ、ましてや大会前となるとさぞかし悔しいだろうと胸が痛む。
立「そういや城戸先生の妹ちゃんは元気か?ほら、オレの花嫁候補の」
「紡ですか?お陰様で今日も元気に学校行きましたよ。それより、いつから紡は立花先生の花嫁候補になったんでしょうかね」
立「そりゃあ、あの入院の時からですかね?」
不敵に笑う立花先生を見て、また箱から1本取り出して火をつける。