第36章 そして朝日はまた昇る ( 城戸 桜太 )
「あら?私もご一緒していいんですか?」
「もちろんですよ。と、いうか···ぜひお願いします。俺ひとりじゃ立花先生の暴走は止められないですから」
普段から当直で主任とは一緒になる事は多いから、俺が立花先生に振り回されてるのをよく知ってる主任はまたクスクスと笑い出して快く了承してくれた。
助かった···と、安堵の息を吐く俺だった。
立「お・ま・た・せ。はいコレ、待たせたお詫びに愛のプレゼント」
「俺もさっき来たばかりなので大丈夫です。でも折角なので頂いておきます。あぁそうだ、抱き合わせの物はお返ししときますね」
立「つれないなぁ城戸先生は。オレからの愛も受け取ってよ」
差し出された缶コーヒーを受け取り、プルタブを開ける。
立「なんだか今日は外来の患者さんが多くてさ。膝が痛いとか、腰が痛いとか。季節的に仕方ないのかもなぁ···午後は夕方になると運動部の学生がわんさか来るしな」
「整形外科なんですから、そういうものでは···」
言いかけた所で、ポケットの院内電話が震え出す。
「ちょっとすみません···はい、城戸で、」
ー 城戸先生、担当の患者さんが喘息発作です!今どちらにいらっしゃいますか?! ー
「数字は?」
血中酸素の数字を聞いて、箸を手放した。
「分かりました、すぐ向かいます。先に機材の用意をお願いします、じゃ······すみません立花先生、急患なので俺行きます」
「城戸先生、私も行きます」
「お願いします。急ぎましょう」
食べかけのお弁当箱もそのままに、看護主任と同時に病棟へ向かって食堂のドアをすり抜けた。
あの子はここに運び込まれた時から今日まで、何度か発作を起こしてる。
夜中や明け方に喘息発作を起こした事はあるけど、こんな昼間の時間は初めてだ。
今朝の回診では、あんなに元気な姿だったのに···と思いながらエレベーターホールの前に辿り着く。
エレベーターはいま···最上階と5階か···
「主任、俺はこのまま階段で行きます。主任はエレベーターで上がって来て下さい」
「階段って···小児科病棟は4階ですよ?!」
「大丈夫、なんて事ない階数です。エレベーターを待つよりきっと早く着いてみせます。主任は病棟に着いたら一応保護者の方に連絡を」
じゃ、先に行きますと言って階段を駆け上がる。