第36章 そして朝日はまた昇る ( 城戸 桜太 )
慧「紡、早く来いっての!カリスマ美容師のオレ様が寝癖直したる」
『いいってば!自分で直すから!』
まったく、朝から騒がしい。
「慧太、紡···せっかくの朝食が冷めちゃうから、早く座りなさい。紡はとりあえず洗顔と歯磨き、慧太は洗濯機のスイッチ押してきて···素早くね」
笑顔を崩さず言ったのに、二人とも妙に姿勢正しく返事をしてそれぞれ早足でリビングから出た。
···なんでだ?
『頂きます···あ、今日のお味噌汁はほうれん草だ···ん、おいしい~!』
テーブルについて早々に紡が味噌汁に口を付け、ほわっと嬉しそうな顔をする。
そうそう、この嬉しそうな顔を見ると俺も一日を乗り切れるんだよね。
慧「だし巻き卵か···おろし付きってのが旅館みてぇな朝飯だな。うん···うめぇ」
『だし巻き卵って事は、今日のお弁当のも?』
「お弁当の卵焼きは、ちゃんと甘いヤツにしてあるよ。紡、甘い卵焼き好きだろ?」
お弁当の中身が朝ご飯と同じってのは、味気ないからね。
二種類作るのは手間だと思われがちだけど、俺は別に···紡が喜ぶなら手間だとは思ってはいないから。
『桜太にぃ、影山が昨日のおにぎり美味しかったって言ってたよ。ごちそうさまでしたって』
「なら、良かった。実は今日もおにぎり作ったから影山君に渡してあげて?今日は焼きたらこと手作りおかかと刻み焼肉の3つ。紡のは小さめ、影山君のは大きめに作ってあるからね」
『やった!桜太にぃありがとう!』
慧「つうか、お前まで朝練の後に食ったら横に身長伸びんじゃねぇのか?」
『慧太にぃはいちいちうるさい!だからヒゲなんだよ』
慧「ヒゲ関係ねぇだろうが!おい!」
また始まった···
でも、これが俺達の日常だから仕方ない···かな?
「ほら、早くしないと影山君と一緒に学校行くんだろ?遅れるよ」
食べ終わった食器を纏めながら言えば、紡はバタバタと支度をしてお弁当をリュックに詰めて玄関へと向かう。
『行ってきます!』
「行ってらっしゃい···あ、忘れ物は大丈夫?」
『お弁当もおにぎりもちゃんと持ったし大丈夫···あ、でも···』
リュックを背負い直して、紡が俺にキュッと抱き着いてくる。