第36章 そして朝日はまた昇る ( 城戸 桜太 )
「余計なお世話。お前こそシスコンもほどほどにしないと···だよ?」
慧「うっせぇな、お互い様だろうが」
違う···絶対慧太よりも、いや、やめておこう。
「それより紡を起こしてこないと、影山君と待ち合わせして一緒に学校行くなら朝寝坊はダメ、慧太ちょっと紡の部屋に行って起こして来てよ」
慧「オレが行くよりお前が行った方がアイツは喜ぶぞ?」
「それでもいいけど、代わりに慧太がお弁当詰めてくれるなら」
慧「あ~、それな。オレ様は確かに指先器用だけど、そのパンダさん仕様の弁当はお前に任せるわ。ってことで」
お弁当の中をチラッと見た慧太が大きな欠伸をしながらキッチンから出て行った。
慧太もハマれば楽しいのに···キャラ弁作り。
同じ内容のお弁当を病院で広げると、休憩室にいるナースや主任たちが物珍しそうに覗いてキャーキャー言うくらいなのに。
今度、慧太の弁当も同じの作って持たせてみようか。
小さなハートに焼いたハンバーグとか、タコさんウインナーとか···うわ···俺が慧太にそれを作るのはなんか嫌だな。
それに自分で認めるほど指先器用なら、ハマりだしたらきっと俺より···待てよ?
俺より慧太の方が出来栄えが上手になったら、そしたら紡は慧太に弁当作りを頼んじゃったりとかしちゃう?
それはちょっと、寂しいかも。
しばらくはこのお弁当係も、慧太には譲れないな。
っていうか、俺が頑張る。
紡の喜ぶ顔は、まだまだ俺が独り占めしたいからね。
「よし。今日も可愛いよ、パンダさん。お腹を空かせた紡に美味しく食べられておいでね?」
粗熱が取れた事を確認して、いつもの様にニコニコ顔のパンダさんご飯に声をかけ、そっと蓋を閉じた。
『もう!慧太にぃうるさい!!自分でやるからいいの!』
リビングのドアを元気よく開けながら、後ろを振り返って紡が叫ぶ。
「おはよう、また慧太がなにかやらかした?」
テーブルに朝食を配膳しながら言えば、紡は立派な寝癖を手で押さえながら俺を見た。
『桜太にぃ、おはよう···慧太にぃが私の寝癖が素晴らし過ぎるって、直してやるから来い!って。あとブワッて布団捲って、起きないと隣に寝るぞ!とかいうし!ホントやめて欲しい』
隣に寝るぞ!って、おいおい慧太···