第35章 ファインダー越しの恋 ( 澤村 大地 )
ー ピッ! ー
清水さんが吹いた笛の音で流れが止まり、どちらかの点が入ったという事が分かる。
菅「あ、吉岡さんだ···やっほー!」
澤「スガ!まだ試合中だろ!練習とはいえ紅白戦なんだから、しっかり集中!」
菅「へーい···」
紡「スガさん、また大地さんに怒られてるぅ」
クスクスと笑いながら、城戸さんがボールを持って近くに歩いてくる。
紡「来てくださってありがとうございます。もう少しで終わると思うので、ゆっくり見学してください···絶対、負けませんから」
そう言われて得点板を見れば、点数はどっちも23点で。
繋「コラ紡!時間勿体ないからダラダラしてんじゃねぇ!」
うわ···女の子にも厳しいコーチなんだ···
紡「もう!繋心は私にも厳しすぎ!私は選手じゃないんだからね!···だからハゲつる繋心なんだよ···もぅ···」
繋「聞こえてっからな紡!誰がハゲつるだコラァ!!さっさとサーブ打て、このチビ助が!」
紡「チビ助って言った!···桜太にぃに言いつけてやる···」
繋「いや、それは待て···と、とにかくサーブ!清水!早く笛吹いてくれ!」
紡に、繋心···お互いに名前を呼び捨て?
もしかしてこの組み合わせが、恋人同士なの?
でも、随分と年の差が···あるような?
···ダメダメ!
モヤモヤと考え事をしていたら、シャッターチャンスを逃してしまう!
軽く頭を振り、カメラを構えてファインダーを覗く。
無我夢中になって何度もシャッターを押し···やがてゲーム終了の笛の音でそれも終わった。
『えっ?!そうなんですか?!』
部員のみんなが着替えをしている間、私は武田先生や···あのちょっと怖い感じのコーチと話をしていた。
繋「そういう事。あのチビ助の兄貴とオレは、子供の頃からの知り合い。ウチのジジイが監督やってる子供バレーチームからの腐れ縁ってやつな」
『で、でも!さっき凄く仲良さげにしてたので、てっきり私···その、恋人同士···かな?とか···』
繋「はぁっ?!オレが?!あのチビ助と?!···頼む···頼むからその想像だけは今スグ記憶から消してくれ」
眉間にシワを刻んで苦い顔を見せる相手に、思わず身震いを覚えながらコクコクと頷いた。