第35章 ファインダー越しの恋 ( 澤村 大地 )
澤「いまや校内の至る所に貼ってあるから、俺としてはちょっと恥ずかしいっていうか···ハハッ」
紡「恥ずかしいとか、なに言ってるんですか大地さんは。こんなに大地さんのありのままの感じを表現されてるのに、そんな事を言ったらこのワンショットを撮ってくれた方からド突かれますよ?」
澤「ド突かれますよって···」
苦笑いを浮かべながら、澤村君がチラリと私の顔を見る。
···そんなことは、しないけど。
そういった意味を含めて、私は小さく笑ってみせた。
紡「大地さんは恥ずかしがってますけど···私は好きです、このポスター。デサインといい、ショットの感じとか···なんかこう、この背中に着いて行きたい!って思わせるような···きっとこの写真を取られた方は素敵な感性を持ってる人なんだろうなぁって、ポスターを見る度に思ってます」
澤「だってさ、吉岡さん」
『え?』
にこにこと笑顔を見せながら、澤村君が私を見る。
紡「えっ?···大地さん、もしかして···?」
澤「そう、このポスターの写真を撮ったのは吉岡さんだよ」
紡「そうなんですか?!」
『···はい、まぁ』
紡「凄い···ご本人にお会い出来るとか···ウソみたい」
褒められて、悪い気はしない。
嬉しいと思う気持ちだって、当然ある。
だけど···
紡「そうだ!ご迷惑でなければ練習とか見に来て下さい!私はマネージャーですけど、1年生が面白いんですよ!ね、大地さん!」
澤「あはは···そうだなぁ、ちょっと困った性格してるヤツらばっかだけどな」
紡「またそういうのを写真に収めて貰ったら、新しいポスターも作れて部員勧誘にもなるし···ぜひお願いします!」
『私は別に···プロを目指してるわけじゃないし、そんな腕前とかでもないから···』
このポスターは、きっとモデルが澤村君だったから···この仕上がりなんだと思うし。
だってこの背中は···私が、こんな背中に守られてみたいって、思ったから。
紡「でも、吉岡さんの撮ったこの大地さんの後ろ姿は素敵だと思います。言葉で語らず背中で語るって言うか、カッコイイんです!」
澤「おいおい紡、本人目の前に褒めすぎだろって···」
そう言いながらも、澤村君だって嬉しそうな顔してる。
『気が、向いたら···』