第35章 ファインダー越しの恋 ( 澤村 大地 )
澤村君を素材にしたポスターが、校内の掲示板を初めいろんな所に貼り出されていて、階段の踊り場にも貼ってある事に気付き、思わずそのポスターの前で足を止めた。
出来上がったポスターを見る度に、ちょっと気恥しいような···そんな擽ったい気持ちに肩を竦める。
そう言えば、男子バレー部に4人の1年生が入部したって清水さんから聞いた。
まぁ、このポスターを見ての入部かどうかなんて···分からないけど。
澤「おはよう、吉岡さん」
ぽんっと肩を叩かれ振り返れば···
『あ···おはよう、澤村君。朝練終わったばっかり?』
額に汗が残る感じを見て、思わずそう付け足してしまう。
澤「え?!もしかして俺···汗臭い?!」
ザザっと数歩下がる澤村君を慌てて引き留めながら、大きく首を振った。
『あ、ち、違うよ!おデコにうっすら汗が残ってるから朝練終わったばっかりなのかな?って』
澤「汗が?···えっとタオル、タオル···あ、れ?確かにちゃんと入れたはずなのに···」
徐ろにカバンを開けてガサゴソと探る澤村君に、自分のポケットからハンドタオルを出して、向けた。
『良かったらこれ···使って?』
澤「そういう訳には···」
『いいから、気にしないで?』
精一杯の平静を装って、そのままハンドタオルを手渡す。
澤「···ありがとう」
どうか···触れた指先から、このドキドキが伝わりませんように···
澤「ちゃんと洗濯して返すから」
私のハンドタオルで澤村君が汗を押さえるのを見て、ドキドキが更に高まっていく。
なにか、言わなきゃ。
そう思っても上手く言葉が出なくて微妙な空気が漂い始めた時、階段を駆け上がる足音に2人で視線を動かした。
紡「あ、いたいた大地さん!」
澤「紡?」
あ···この子は···
紡「大地さん、忘れ物です」
澤「あ、忘れてたのか···道理で。わざわざ届けてくれてありがとうな」
紡「わざわざっていうか、私の教室は上の階ですから通りすがりにですよ?」
ほら、また。
澤村君は、この子と話す時に···優しい目をしてる。
それに気付いたのは、最近だけど。
でも、そんな事が···そんなちょっとの変化が···私の胸に小さなトゲを刺した。
紡「あっ···ここにも貼ってあるんですね、ポスター」
『え?』