第34章 ゆっくり進もう··· ( 金田一勇太郎 )
先に帰るねという友達を見送ると、入れ違いで金田一君が走って来た。
金「悪ぃ、待たせた」
『あれ?国見君は?』
いつも国見君も一緒に途中まで3人で帰ることがほとんどなのに。
金「国見は···アレだ。及川さん達となんか話があるからとか···そんな感じ。だから今日は2人で帰るぞ」
『···うん!』
“ 2人で ”なんて言葉に思わず元気に返事をすると、金田一君は笑った。
だって、嬉しいんだもん。
いつもは国見君と3人で肩を並べて歩く道も、今日は私達2人だけの影が足元から伸びている。
いくら2人だけで歩いていても、影は···ふたつに分かれたままで。
ー それ、金田一じゃなくても普通じゃない? ー
不意に、友達の言葉が頭を過ぎる。
普通って、なんだろう。
普通じゃないって、なんだろう。
友達と恋人の違いって···なんだろう···
考えれば考えるほど、よく分からなくなっていく。
それでも私は、やっぱり金田一君が好きなんだよなぁ。
どこが?とか聞かれても、好きなのは好きだし。
なんで?って聞かれても、好きなのは好きだし。
でも。
金田一君は···どう思ってくれてるんだろう。
私だけが好きだって思ってたら、寂しいかも。
そう考えると、例え影でも離れてるのが切なくて···
せめて影だけでも手を繋いでるかのように、そっと手を動かした。
足元から伸びる影が、離れた場所でひとつに重なる。
これがいまの、私たちの精一杯なのかな···
なんかちょっと、寂しいかも。
金「···なぁ」
急に金田一君が立ち止まり、私を見る。
『ん?』
影だけの手繋ぎを見られたら恥ずかしいから、サッと手を引いて何もしてない素振りを見せる。
金「あ···いや、なんでもねぇ···こともない事も···ない、けど···」
『え~、どっち??』
鼻の頭を掻きながらポソポソと話す金田一君に笑いながら聞き返す。
金「だからアレだ···その、手···繋ぐか?」
ゴシゴシとシャツで拭って、目の前に差し出させる金田一君の···大きな、手。
金「く、国見···もいねぇし、とかじゃなくて···お前が、イヤじゃなければ···だけど」
『イヤ、じゃない···イヤなんかじゃないよ』
そう言いながら、差し出された金田一君の手に自分の手を重ねる。