第34章 ゆっくり進もう··· ( 金田一勇太郎 )
「あんたさぁ。ほんっとに変わってるよね···」
はぁ···と大きなため息を吐きながら、隣に立つ友達は私に言葉を投げる。
『別に、普通だけど』
「全然普通じゃないって!いい?!よーく聞いて?私は紡が体育館へ足繁く通ってるのに気付いた時、絶対及川先輩狙いだと思ってたよ!なのに···まさかの金田一狙いとか···はぁ···」
いいじゃん、別に。
カッコイイ = 及川先輩 だとか。
イケメン = 及川先輩 だとか。
そう言った方程式?みたいなものに、私のイコールが金田一君に当てはまってただけだし。
「ま、ライバルいなさそうで良かったじゃん?」
『うん!』
何となく少し失礼だなと思いながらも、ライバルなんていない方がいいから、そこは素直に返事をした。
「で?紡から告白して付き合い出したのは先月で···どうなのよ、その辺。キス位はしたの?」
『キッ···キス?!』
「バカ!声でかいよ!」
咄嗟に口を押さえても、タイミング悪くバレー部の練習が途切れたところでみんなに丸聞こえになってしまう。
『うぅ···恥ずかしい···』
こっそりコートを見下ろせば、微妙な顔をした金田一くんと面倒臭そうな顔をした国見くんがこっちを見上げてる。
絶対聞こえたよね?!
めちゃくちゃ恥ずかしいヤツじゃん私!!
でも···
本当はちょっと、そういうの···して欲しいとか、思ったり···?
······。
イヤイヤ、何考えてんだろ私!
初めて出来た彼氏にそんなこと言ったら変なヤツだと思われるジャーン!
「っていうかさ。ホント、金田一のどこがいいわけ?いつも一緒にいる国見とかの方がまだうっすら人気あるじゃん?···まぁ国見の場合、何事にも無気力って感じだけどさ」
隣で柵に頬杖を付きながら、私を見てニヤニヤとした顔を向ける。
『優しいところ、かな。あと、気持ちがまっすぐなところ!』
「ふ~ん?金田一が優しい、ねぇ···」
『ホントだって!毎日家まで送ってくれるし、そのあともずっとLINEで話してるし!』
「それ、金田一じゃなくても普通じゃない?」
『え?そうなの?』
「ま、金田一がまっすぐなのは部活見てても分かるけどさ。あ、ほら終わったみたいだよ。ウチらも外行こうか」
ザワつくギャラリーに混ざって私たちも外へと向かった。