第34章 ゆっくり進もう··· ( 金田一勇太郎 )
金「じゃ、家に着くまでこのまま帰んぞ」
『···うん!』
ただ重ねただけの、繋がれた手。
帰り道ですれ違うカップルみたいな、指を絡めた繋ぎ方まではまだまだ遠いかも知れないけど。
いまはこれだけでも、私としては大きな進歩だから。
『でも、どうして急に···手、繋ごうとか言ったの?』
何気なく聞いて見れば、それは···
金「お前が、影だけのオレと繋いでたの···見たから」
『見てたの?!』
うわわわわっ···恥ずかしい!!
金「オレは、影だけじゃイヤだし。それから、ちゃんと好き···だし、お前のこと」
ちゃんと、好き···とか。
嬉し過ぎる!!
金「だから、オレ達はオレ達のペースで···いい、かな?とか」
ペース?
『なにが?』
金「なにが?じゃねぇよ。体育館で叫んでただろ···」
体育館で···って···あぁっ!!
『あ、あれはね!違うから!···別に今すぐそういうのしたいとか、そんなんじゃないから!』
金「そこまで必死に否定しなくてもいいだろ!···あの後どれだけオレが···って、まぁ···いっか···」
繋いだ手をキュッと握り直して金田一君がため息を吐いた。
金「そのうち、な?」
そのうちっていうのがいつなのかは分からないけど、でも···いまは···
こうして手を繋いで歩けてる事がなにより嬉しくて。
綻んでしまう顔を隠しながら、金田一君の隣をゆっくり歩く。
金「なにニヤついてんだし」
『ニヤついてなんかないし!···見ないでよ』
金「見るに決まってんだろ···っていうか、紡ちょいこっち見ろって」
もう、なに?って言って金田一君を見上げたら、ほんの一瞬だけ触れる唇の感触に全身が硬直する。
金「いまはこれが精一杯だから」
『ズルい金田一君···っていうか、ここ···街中だけど···』
金「う···うっせぇよ···行くぞ」
金田一君の言ってたそのうちは、私が思ってたよりも随分と早く···やって来ました。
『自分でしたのに照れないでよ···』
金「いまオレを見るな」
『見るに決まってるじゃん?私の···彼氏なんだから···』
まだまだこの先、きっといろんな事が起こりそうだけど···私たちは私たちのペースで···
ゆっくり進めば···いいよね?
~ END ~