第3章 小さな手のひらに大きな愛を (西谷 夕 ・特別番外編)
菅「何言ってんだ西谷!お前紡ちゃんと付き合ってんだろ?!だったら、紡ちゃんが1番じゃなきゃおかしいじゃん?!」
「だから何で・・・オレの1番は、誰がなんと言おうと潔子さんなんです!紡は1番なんかじゃないんです!!」
紡は・・・オレの・・・
木「~ッス!」
成「今なんか凄い宣言が外まで聞こえてたけど?」
木下と成田が2人で体育館に入ってくる。
澤「あれ?縁下はどうした?」
そう言われると、確かにいつも3人一緒に来るのに力がいない。
木「あぁ・・・今オレ達が来た時、そこに城戸さんがいて・・・ですね・・・縁下が声を掛けたら、教室に忘れ物したとかって走ってったのを、縁下が追いかけて行きました」
菅「何で縁下が?」
成「何か様子が変だったし、その・・・なぁ木下?」
木「まぁ、城戸さんが・・・泣いてるみたいだったから・・・で、縁下が慌てて追いかけて・・・みたいな?」
「泣いて・・・た?紡がか?」
オレが2人に聞き返すと、微妙な顔で頷かれた。
田「おい、ノヤ・・・もしかして今の話、お嬢に聞かれたんじゃ・・・?」
青い顔で、龍がオレに耳打ちしてくる。
「聞かれたとしても、ホントの事だし」
別に隠す必要もねぇ。
旭「と、とりあえず西谷、追いかけなくていいのか?」
「力が追いかけたなら、別にイイっす」
菅「いや、西谷も行けよ!」
「何でッスか?今からじゃ追いつかないし、それに力が、」
菅「そんなこと言ってると!今にどっかで誰かに紡ちゃんの事スルッと持ってかれるぞ!」
「どっかの誰かって、誰ッスか?」
澤「例えば・・・縁下、とかな?」
何で力が・・・?
もしかして、力も紡の事が?
「もし紡が、オレじゃなくて力の方がイイってなら・・・それでも、イイっす・・・」
旭「何でそんなこと言うんだよ。今朝だって城戸さんはあんなに、」
澤「旭!」
旭さんが何かを言いかけた時、大地さんがそれを止めた。
結局、オレは紡のこと・・・
何も知らないまんまじゃねぇか。
チリチリと痛み出す胸に気づかない振りをして、オレは体育館の入口をジッと見続けた。