第33章 とっても小さな恋のものがたり ( 国見英 )
声がする方へ顔を向ければ、そこには大好きな人がいた。
国「軽い熱中症だってさ。注射もしたし、あとはゆっくり寝ればいいって言ってた···お前、どこに住んでんだ?行くとこないなら···」
オレん家、来るか?
大好きな人の住む家···
そこに行けば、毎日一緒にいられるの?
国「母さんも、それでもいいって言ってたし」
自分には、家がない。
だからいつも、寝るところを探してた。
だから···大好きな人の住む家に、行きたい。
« にゃあ~ん »
ありがとうの気持ちも込めて、大きくひと鳴きした。
そう···
私は···一人ぼっちの猫。
いつの間にか、ひとりぼっちになった···猫。
小さい時は、家族もたくさんいた。
でも。
いつの間にか、ひとりぼっちになってた。
国「そっか。じゃ、オレん家の家族だな···名前は···」
つーちゃん
国「今日からお前は、つーちゃんな?」
大好きな人が、名前をくれた。
今日から私は···つーちゃん
それが私の、新しい名前。
国「帰るか、オレ達と···お前の家に」
« なぅ~ん··· »
ここへ来た時と同じように、温かい胸に抱かれる。
これからずっと、あの道で待たなくてもいいんだ。
雨に濡れなくてもいいんだ。
いじめっ子に追いかけられなくても···いいんだ。
大好きな人に抱かれながら、嬉しくて嬉しくて···ゴロゴロと喉を鳴らした。
そんな嬉しい日から···どれだけ経ったのだろう。