第33章 とっても小さな恋のものがたり ( 国見英 )
「ほら、英!お弁当忘れてる!」
国「あ、やべ」
「高校生になったんだから、もっとしっかりしなさい?」
国「へ~い」
ちょっと前までとは違う格好した大好きな人が、今日も朝早くから玄関に歩いてく。
私はその後ろをてくてくと歩きながら、時々その足に擦り寄りながら間をくぐり抜ける。
国「おい···危ないっつーの」
そんな事を言われても、お構い無しに擦り寄ってみる。
国「分かった分かった、帰って来てから遊んでやるから」
いつまでも体をすり寄せる私の頭を撫でながら、大好きな人がにこりと笑う。
国「じゃ、お利口さんで待ってろよ?」
« にゃ~ん »
外へ出ていく背中に、大きくひと声鳴いた。
遠ざかって行く足音に耳を傾けながら、小さくひとつ···あくびをする。
ぴょん···っと窓辺に飛び乗って、そこからまた大好きな人の背中を見続けた。
行ってらっしゃい、私の大好きな人。
~ END ~